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第113話 遺言開示
翌朝、土曜日の朝10時。
会社の会議室に集まった。
出席者は、三浦社長、重役8名。
他に、
• 執事の小林さん
• 再婚妻・立花亜矢さん
• 長女・立花紗奈さん(高2)
• 次女・立花香菜さん(中3)
• 財産管理会社の担当者
• 山川弁護士と秘書スタッフ一同
颯太はほとんど食べていないせいで、足元が心もとない。
それでも、張りつめた緊張感だけは全身から伝わっていた。
全員が起立している中、山川弁護士が口火を切った。
1. 開始の宣言
「私、弁護士の山川は遺言執行人に指名されました。どうぞよろしくお願いします。
では、故・立花悠真様の遺言書の正式な開示を行います。
相続人および関係者の皆様、ご着席ください」
2. 遺言書の確認
「本遺言は公正証書遺言として作成されております。
以下、内容を読み上げます」
3. 颯太に関する項目
「第一に、立花颯太に対し、生前に設定した 100億円の信託財産 を引き続き管理させる。
用途は生活・安全・教育・将来の責務に限る。
なお、この管理は佐久間陽一に一任する」
(※これは俺が佐久間姓だった頃に作られた遺言だ。今は立花陽一になっている)
颯太の手が小さく震えていた。
……まあ、俺も同じなんだけど。
4. 妻に関する項目
「第二に、妻・立花亜矢には 遺産総額3000億円 を相続させる。
ただし、これらは換金できない資産が多く含まれる。
そのため 450億円を“保護信託” として管理し、
運用益はすべて元本に積み立てる。
信託からは毎月100万円の生活費を支給する。
ただし年に2回、2000万円ずつのボーナスを支給する。
元本の引き出しは不可とし、その判断は弁護士に委ねる」
亜矢さんの表情が強張った。
弁護士は淡々と読み続ける。
5. 娘二人に関する項目
「第三に、二人の娘にはそれぞれ 1500億円 を相続する。
ただし、その多くは換金できないものとする。
現金は 150億円の保護信託 を設定する。
運用益はすべて元本に積み立てる。
本人の判断での引き出しは不可。
必要な費用は弁護士を通じて支払う」
姉妹は小さく息を呑んだ。
6. 財産管理会社(270億)について
「第四に、立花家の資産管理会社が保有する 270億円 の資産は、
“立花家の維持・管理・安全”を目的として存続させる。
使用権は妻に与えるが、売却・処分は不可」
7. 屋敷および維持基金(500億)について
「第五に、立花家本邸および関連施設の維持費は、
500億円の維持基金 により賄うものとする。
管理は財産管理会社が行う」
8. 執事への功労金
「第六に、長年の功労に対し、執事・小林健氏へ 8000万円 を贈与する」
小林さんは静かに頭を下げた。
9. 株式の分配
「第七に、ミツワホールディングスの株式について以下の通りとする」
◎ 重役
「重役各位には 1%(約120億円) を譲渡する」
重役たちは深く頭を下げた。
◎ 社員
「全社員には、合計 35%(約4500億円) を従業員持株会として譲渡する」
重役たちの顔が一瞬引きつった。
◎ 颯太
「立花颯太には 10%(1200億円) の株式を相続させる」
「えっ……?」
重役たちが一斉に颯太を見た。
颯太は俯いたまま、俺の手をぎゅっと握りしめた。
あの視線には耐えられなかったんだろう。
10. 遺言の締め
「以上が遺言の主要部分です。
奥様とお子様方には、このあと会長室にて詳細をお話しいたします」
11. 開示終了
「これをもって遺言開示を終了します」
全員が深くお辞儀をした。
妻は怒りと混乱で表情が固まり、
姉妹は不安そうに母を見ていた。
颯太は俺の後ろで、服の端をぎゅっと握っている。
重役たちは静かに立ち上がり、
颯太に一礼して退室した。
そして山川弁護士が、妻と子供たちに声を掛ける。
──これから会長室で、第2幕が始まる。
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