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第4話「僕は目を閉じて抱かれる」

【12月26日金曜日19:00】 顔も分からぬ見知らぬ男に抱かれている間、僕はいつも目を閉じている。 胸を撫でる手を……、首を滑る舌を……、想像の中で、先生のものへと変換していた。 僕が愛したことのあるたった一人の人。 高校二年生のときの国語の教師。 僕より8歳年上の、チャコールグレーのカーディガンが似合う地味な男。 実際、先生とは10年前に、たった一度キスをしただけの関係。 こんな風に、身体の隅々まで触ってもらったことなど、もちろんない。 僕のせいなのか、何者かに連れ去られ、先生は突然学校を辞めてしまった。 今現在どこで何をしているのか、全く分からない。 知るすべもない。 先生は、おそらく僕の地元である地方都市を離れ、どこかに移り住んだのだろう。 その後の噂を聞くことすらなかったから。 顔だって、声だって、悲しいことに記憶はどんどん薄れてゆく……。 それでも僕は妄想力を膨らませ、カラスにされることの全てを、先生からの行為だと置き換える。 そうやって、この副業に楽しみを見い出していた。 — そんな中、過去に一度だけ、先生を妄想する必要がない程、僕を夢中にしてくれたカラスがいた。 あのカラスに抱かれたのは、まだ暑い9月のことだった。 もし、またその人とマッチングされたのなら、昂ぶる気持ちと、特徴ある香りで気づけるはずだ。 ウッディで深い森のような、特徴ある匂いを纏っていたから。 今夜も、心のどこかで「あの人だったらいいのに」と願っている。 でも、違った。 ハズレだ……。 だから今宵も僕は、先生を思い浮かべ妄想に浸る。 「あっ、ねぇ、もっと、もっと、奥まで……んぁ」 僕の頭の中の先生は、柔らかい雰囲気から獰猛な雄に変身を遂げた。 僕にのしかかり、欲望が丸出しになって、色気が放出されている。 それと連動し、現実の世界ではカラスが、背中から僕をリズミカルに突き上げていた。 ホテルの真っ白で肌触りのいいシーツに、強くしがみつく僕。 カラスの息遣いが激しくなり、ハッハッと乱れた呼吸が首筋にかかった。 「せ、せんせ……」 声には出さず、心の中でそう叫び、頂点まで昇りつめて、果てる。 達したことで内壁がカラス自身を強く締め付けてしまえば、彼も小さくうめき、僕の中で果てた。 頭の中で違う男を思い浮かべていた僕を、カラスは背後からギュッと抱きしめてくれる。 そして、「とてもよかった」とでも言うように、労うような優しいキスを落としてくれた。 — どのカラスも皆、例外なく文鳥にやさしい。 それは文鳥をする者は「愛を失った状態である」ということが、大前提だから。 文鳥は愛を知ったら、鳥籠を卒業しなければならない。 つまり文鳥でいるということは、今なお寂しいということだ。 カラスたちは、文鳥のことを可哀想な生き物だと思っているのだろう。 だからこそ、慈しんで仮初めの愛を惜しみなく注いでくれる。 そして、自分がベッドを共にした文鳥が、いつの日か愛を知り鳥籠を卒業できるように、自由に羽ばたく日がくるように、紳士たちは願っているのだ。

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