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第17話「僕は褒めてもらえる」

【12月29日月曜日15:00】 「今からでも、好きに使っていいですよ」 僕が作業場の機具を触りたそうにしているのが分かったようで、そんなことを言ってもらえる。 「私も、部屋で少し仕事をしますから」 その言葉に甘え、僕は真新しい作業場に入り浸った。 途中ソラが、お昼ご飯だと焼きタラコのおにぎりを運んできてくれる。 片手間にそれを食べながら、端材を削ったり切ったりして、機械や工具を試して過ごした。 — 15時。 温かいゆず茶を持って、シュウがやってくる。 「休憩にしましょう」 「あ、うん」 返事をしたのに手を止めない僕に、シュウが呆れたような、微笑ましいような声で言う。 「こういう作業が好きなんですね、キヨは。でも冷めてしまいますよ、せっかくのゆず茶が」 僕は後ろ髪をひかれながら、身体についた木屑を落とし、シュウの隣に座った。 ゆず茶は程よい甘さで、創作モードだった気持ちをゆっくりと鎮めてくれる。 「秘書の長谷川が、カラテア工房の唐津ツヨシに連絡を入れました」 「え?」 「「大賞を受賞した作品は貴方のデザインで間違いないですね、これは最終確認です」とお伝えしたところ、間違いないとのことでした」 「うわっアイツ、ムカつくわー」 「実際、チームで作成しているところもありますから、本人がそういうのなら、こちらは否定できません」 「もういいよ、あの椅子は。僕はあれ以上のものを作るから。それにコンペに受賞して、フェイジョアホテルオーナーに会うって夢は叶ったしね!」 「キヨ……」 シュウは僕の肩を引き寄せ、抱きしめてくれた。 「本当に立派になりましたね。私は誇らしいです」 誰かに、こんなふうに褒めてもらえるなんて、いつ以来だろう。 いや、初めてかもしれない……。 それに、褒めてくれるのが誰でもよかったわけじゃない。 シュウが、大好きな先生が、欲しい言葉をくれたのだ。 もう少し僕が若かったら、子どもじゃないのにと、格好つけて突っぱねたかもしれない。 でも、そうはしない。 だって今、僕は堪らなく温かな気持ちだから。 「それで、この作業場を使って新しい椅子は作れそうですか?」 「うん!今もアイデアが次から次へと浮かんでるよ」 「では、6日後の1月4日の授賞式で、キヨの何らかの新作が発表できますか?」 「授賞式で?」 「コンペに応募してくる方々は、半年以上かけて一脚仕上げてくることを承知しています。それでも私は、早く皆にキヨを見せびらかしたい」 「なにそれ」 シュウの意外な子どもっぽさを垣間見て、笑ってしまう。 「私は本気ですよ、キヨ」 シュウは真剣な顔をしていた。 僕はその顔にドキリとして、ゆず茶が入ったカップを両手で強く包み込む。 シュウの期待に応えたい。 最良の理解者、最良の作業場、最良の木材を用意してくれたのだから。 なんとか間に合う方法がないか、熟考してみよう。 — 「あのさ、確認しておきたいんだけど、シュウは本当に鳥籠に5億円を支払ったの?なんで?どうして?」 気になっていたことを口にする。 「僕に身体を売らせたくなかったのなら、そう言ってくれればよかったのに。そしたら、僕がフクロウさんに電話をしなくなる。それだけのことだったんだよ」 「5億円は過去との精算です。キヨの、ではなく、私の過去との」 「よくわからないよ」 「では、ここで課題にもある私の打ち明け話をしましょうか」 僕の身体は少しこわばる。 シュウは何を言うだろうか、と。 「ワン、ワンワン!」 ガラス扉の向こうで、ハルが吠えた。 こんなところにいたのか!とでも言いたそうだ。 前足で扉を引っ掻き「あそぼ、あそぼ」とアピールしてくる。 「やっぱり話は夜にしましょう」 そう言って立ち上がったシュウを見て、僕は少しホッとした。

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