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第18話「僕が先に打ち明ける」

【12月29日月曜日2000】 夕方、別荘の建物内を全て見て回った。 5億円というお金を動かしたり、使うかも分からない作業場や高級木材を用意してしまうシュウ。 けれど、別荘内は過剰な華美さはなく、無駄なお金の掛け方をしていないのが分かる。 食事だってそうだ。 特別に高価なものを好むわけではなく、ごく普通に美味しいものをソラに用意させている。 金と地位を手に入れても、アパートで暮らしていた頃と人が変わってしまった訳じゃない。 それは僕を安心させた。 夕食前、ダイニングの暖炉には火が入っていた。 空調がしっかりしていて、寒さは感じない室内だったけれど、やはり本物の火はいい。 ソラが作ってくれた煮込みハンバーグの夕食を食べた後、僕らは暖炉前にロッキングチェアを並べ、座った。 ソラはスパイスの入ったホットワインを用意してくれ、ハルを引っ張り、離れ屋に引き上げていく。 赤い炎が美しい、静かな夜だった。 — 「僕から打ち明け話をしてもいい?」 「どうぞ」 シュウがやさしく微笑む。 「僕は高校生の頃、家に帰るのが嫌で、毎日、繁華街をふらふらしてた。お巡りさんとも顔見知りで、彼らは僕に対し、家に連絡することも、学校に連絡することも、意味がないと認識していた」 「私には随分、危なっかしく見えましたよ」 「うん。だから先生は、僕に居場所を与えるため、アパートへ寄ることを許してくれた」 「初めて来たとき、物珍しそうにしていたね。アパートってこんな風なんだ!って喜んでいた」 「僕は、母親とは小さな頃に別れ、一人っ子で、父は忙しくほとんど家にいないって、そんな家庭環境を可哀想ぶって……」 「実際、君は寂しそうだったよ」 「僕に楯突く大人は誰もいなくて……それは本当は僕の父親が、ヤクザの組長だからで……」 声が小さくなってゆく。 今更なのに。 岩山のことをシュウが知っていたということは、もうとっくに全てバレているのに。 でも、今更だとしても、謝らなくては。 「シュウはまだ若手の先生だったから、理事長や校長は承知していた僕の家の事情を、知らなかった」 「そうだね。知らなかった」 「だから、僕をアパートに上げて、よくしてくれた。そのせいで、シュウは学校を辞めさせられた。本当に、ごめんなさい」 「違うよ」 「違わない!あの時、岩山が手配した車にシュウは乗せられ、いなくなって、二度と戻って来なかったじゃないかっ!」 僕は興奮し、声が大きくなる。 「そのことを、誰かに確認したかい?」 妙に冷静なシュウの問いに、僕は首を振る。 確認なんてする気も起きなかった。 シュウが連れ去られたあと、僕は一念発起する。 父親と縁を切る決意をし、猛勉強を始めた。 そして、ほとんど顔を合わせたことがなかった母親のところへ身を寄せ、苗字も変えた。 「大きく誤解しているよ、キヨは」 「誤解?」 「確かに私は、最初はキヨの家庭の事情を知らなかった。でも身内に、わざわざ耳に入れてくる者がいて、途中からは把握していたよ」 「え?そうなの」 「その上で、私は君が自分と似た寂しさを持っていると感じていた。境遇が似ていると思った。だから君と……、キヨと少しでも一緒にいてあげたかった」 「でも、岩山はシュウのことを憎く思っているよ」 「えぇ。教師を辞めた私を探し出し、岩山氏は私を叱りに来ました」 「それは、10年前に?」 「はい。10年前の春に。坊ちゃんに中途半端な愛を与えて、途中で放り出すなんて、最も残酷な行いだと、怒っていました」 シュウは立ち上がり、暖炉の空気調整レバーを絞った 「キヨ、一緒にお風呂に入りましょうか」 どうやら僕の打ち明け話は、全てシュウの想定内だったらしい。

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