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SSその4「告げない真実」

《シュウ》 風呂でのぼせてしまったキヨチカにバスローブを羽織り、抱き上げて部屋へと運ぶ。 彼はもう立って歩けるほど回復していたが、甘えてきたし、甘やかしてやりたかった。 今夜はもう、これ以上の接触が持てない私たちの、ちょっとした戯れだ。 キヨチカにパジャマを着せ、ベッドに寝かし、羽毛布団をかけてやる 「今夜はもう寝るといい」 「そうだね、起きていても何もできないし」 実際、眠かったのだろう。 程なくしてスースーと寝息を立て始めた。 — キヨチカの寝顔を見つめながら、さっき風呂で彼に告げなかった事柄について、考える。 本当は、父のバックにいる組と、キヨチカの父親の組の抗争は始まりかけていた。 しかし、キヨチカの父親はタイミング的に、どうしてもそれを避けたかった。 今なら分かるが、大変賢く優れた極道なのだ。 結果、迷惑料としてこちらに5億円を納めてきた。 誰も、キヨチカに迷惑などかけられていないのに……。 その5億円で、私とキヨチカの別れは決定的となった。 合わせる顔がないとは、こういうことだ。 だからこそ私としては、なんとしても更に事業を拡大させ、その5億円をあちらに返したかった。 お金だけじゃない。 人望も地位も高め、返却できる資格を得たかった。 今回、キヨチカを愛するための資格を得る対価が5億円なのは、そういうことだ。 岩山氏の温情と言えるだろう。 彼が私を認めてくれた証拠だ。 もうこれで貸し借りは無い。 負い目は存在しない。 5億円で失った愛を、5億円で買い戻したのだ。 羽毛布団をめくり、眠るキヨチカの横に入り込む。 彼の体温でベッドは温まっていて、私は堪らなく満たされた気持ちになった。 「おやすみ、キヨ。また明日」

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