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SSその5「エントランスを飾る」
《シュウ》
キヨと、ソラと、ハルが川越の倉庫に行っている間に、旧知の華道家へ電話を入れた。
「頼みがあるのです。急な話で申し訳ないけれど、1月4日の午前中にエントランスの花を活け替えてもらいたくて」
「オーナー自ら連絡を寄越したと思ったら、それはまたイレギュラーな。例年松の内は、正月の花のまま行くだろ。どうした?なにかトラブルか?」
「いえ、違うんです。素晴らしい椅子が仕上がる予定なので、その花と貴方の花をコラボさせたい」
「へー。随分入れ込んでるんだな。写真送ってこいよ。コラボに値する椅子だったら、やってやるよ」
「まだ完成していません。というか、全貌も見えていません」
「は?明日は大晦日だぞ?間に合う話なのか?」
「はい。……その予定です」
「それは、フェイジョア・ウッドチェア・アワードの大賞作品とは別、ということか」
「見つけたんです。彼を」
「え?オマエがアワードを開催する目的だと言い切る少年がか?」
「もう少年ではありませんでしたが……」
「それは面白い。才能ありそうなのか?こんな短時間で形にできるほど?いや堅実なオマエがこんなことを言い出すんだから、あるんだろな」
華道家の声が弾む。
面白い楽しみを見つけたと思っているのだろう。
「形が見えてきたら写真を送ってくれ。1月4日は、まだ花の市場は休みだが、生産者のとこへ出向いてでも、なんとかしてやるよ」
私は礼を言い電話を切る。
どうしてこんなにも、キヨチカの才能を信じられるのか自分でもわからない。
でも確実に、彼は私の期待に応えてくれるだろう。
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