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第24話「僕がもらった言葉」

【12月31日水曜日05:00】 暗い部屋で目が覚めると、僕はまだシュウの腕に包まれていた。 一晩中ハグされていたのだろう。 その腕を解くことは、とても勿体ないけれど、仕方がない。 ゆっくりと、シュウの腕を持ち上げ抜け出そうとする。 しかし、眠っているシュウは、無意識に僕を抱き寄せ、その動きを封じ込める。 そんな仕草に「幸い」を感じながらも、僕はまた腕の間から抜け出そうと試みる。 「キヨ……」 小さな声で、寝言のように名を呼ばれた。 満たされた気持ちが、僕のやる気を強固にする。 — なんとか甘い誘惑に打ち勝ち、作業場へ移動する。 新しい椅子のイメージは明確に掴めた。 あとはとにかく手を動かすのみだ。 鉋(かんな)や刃物でマホガニーのキングチェアを削る。 その度に微かに甘い木の匂いが漂い、美しいリボン杢が現れるのだ。 見惚れるほどの素材を、活かすも殺すも、ここからは僕の集中力にかかっていた。 夢中になると、周りの音が何も聴こえなくなる。 だから、すぐ傍に置かれたベンチチェアに、シュウが座っていることに気がついたのは、彼がやってきて少し経ってからのことだった。 「シュウ……」 「おはよう。ごめんね、邪魔したかな」 「ううん。大丈夫。おはよう、早起きだね」 僕は刃物を置き、大きく伸びをした。 シュウの隣に移動して座れば、マグカップに入ったコーヒーを差し出してくれる。 「少し冷めちゃったけど」 確かにだいぶぬるくなっていて、時間の経過を僕に知らせる。 それでも、香り高く、酸味の少ないコーヒーで美味しかった。 「忙しいところ申し訳ないんだけど、忘れていたことが1つあるのです」 シュウのマグカップは、もう空になっていた。 ずっと僕の作業する姿を、見守ってくれていたのだろう。 「昨日の9時に送られてきた鳥籠からの課題だけど、私の我が儘をまだ言っていなかったよ」 「そうだ!僕の我が儘を聞いてもらっただけだったね。なになに、シュウの我が儘、なんでもいいよ!」 「キヨ。1月4日の授賞式が終わっても、ずっと私の傍にいてほしい。この工房を自由に使って、フェイジョアホテルを彩る椅子を作り続けてほしい。つまり……、専属の椅子デザイナーになってくれませんか」 シュウは、一世一代の我が儘を告げるかのように、真剣な顔をしていた。 まるでプロポーズみたいだ、と思ったけれど、口には出せなかった。 ただ、コクコクと頭を縦に振って、思わず滲んでしまった涙を木屑のついた手で拭う。 「だけどさ、どうしてこんなタイミングで言うの?シュウ」 「え?」 「鳥籠のせいで、キスも、ハグもできない。僕のこの気持ちを表現する術がないよ!あぁ、もう」 僕は立ち上がって、作業途中の椅子の前へ戻る。 「今は、この温かな気持ちを、この椅子に込めることしかできない」 そう告げた僕は、再び、音が消えたような集中の世界へと入っていった。 — 9時少し前に、今度はソラが僕を呼びに来た。 彼はシュウとは違って、目の前で大きな声を出し、身振り手振りで現実へと僕を引き戻してくれる。 「おーい、キヨチカさーん、朝食ですよー!今日は、マフィンを焼きましたよー」 手を止めると、急に空腹を感じる。 そろそろ次の課題も出る頃だ……。

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