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第25話「僕へのプレゼント」

【12月31日水曜日11:30】 キッチンでは、ソラが年越し蕎麦を打っているらしい。 僕は椅子を削っていて、シュウは作業場の一角にノートパソコンを持ち込んで、仕事をしている。 なぜシュウが作業場にいるのかは、今日の鳥籠の課題によるものだった。 『文鳥のための鳥籠卒業課題その3。只今より24時間、二人は同じ空間に居続けること。性的な接触は禁ずる。また、互いに一つずつ贈り物をすること』 「気が散りませんか?」 シュウは心配してくれたけれど、工房で働いていた僕は、周りがガヤガヤしていることに慣れている。 「全然大丈夫」 実際、作業を始めれば、近くにシュウがいることも忘れてしまうのだ。 — 「……キヨ、キヨ」 名前を呼ばれていることに遅れて気がつき、顔をあげる 作業場の中には、シュウだけでなく、見知らぬニット姿の男がいた。 「ごめんね、キヨ。また手を止めさせるけど、少しだけいい?」 「できるだけ薄着になって、こちらに立っていただきますか?」 ニットの男が僕に言う。 訳も分からずその指示に従えば、男はすごい勢いで、裁縫用のメジャーを僕にあて、数字をメモしていった。 「シュウ、なにこれ?どういうこと?」 「私からの贈り物だよ。1月4日に着るスーツを作ってもらおうと思ってね。鳥籠の課題じゃなくても、プレゼントする予定だったから、ちょうどよかった」 男はシュウと親しいらしく、軽口を叩く。 「えぇ、大晦日に呼びつけて、1月4日の朝までに仕上げるスーツは、さぞ最高のプレゼントでしょう」 「どうせ正月はすることないから、構わないって言ってくれたくせに。それにしっかり年末年始割り増しと、特急料金と、出張費を、上乗せして請求してくるのでしょう」 「はいはい、おっしゃる通り。……次は両手を肩の高さに上げていただけますか?今回フィッティングの時間が取れませんから、細かいところまで計らせてもらいますよ」 二人の会話をポカンと聞いていたが、ようやく授賞式の日に着るスーツのことだと気がつく。 「ありがとう!シュウ。そっか僕、授賞式に参加できるんだ」 「えぇ。大賞受賞の記念盾はキヨに渡せませんが、エントランスに飾る椅子の作者として紹介させてください」 採寸後、シュウはニット姿の仕立屋に、要望を伝えている。 生地はどれで、色はこれで、ボタンはそれで。 ポケットの形がどうの、裏地がどうの……。 シャツとネクタイと靴も、仕立屋経由でお願いするようだ。 「そっか、僕のオーダースーツ……」 仕立屋を見送り、幸せな気分で作業に戻ろうとするが、新たな客がまたやってきた。 — 「キヨチカ坊ちゃん、大晦日まで木を削って仕事だなんて、ご精がでますね」 「岩山!あっ、秘書の長谷川さんも」 二人とも大晦日とは思えぬほど、ビシッとしたスーツ姿だ。 まるで紳士服売り場のマネキン2体に見える。 「どうして二人が一緒に?」 シュウも不思議そうに問いかける。 「この秘書が、タクシーを捕まえられず、中軽井沢駅からとぼとぼ歩いてたから、車で来た私が乗せてやったんです」 「岩山さん、それはありがとうございます。しかし、貴方のことをお呼びした覚えはないのですが」 シュウと岩山は、少しだけ険悪だ。 「年越し蕎麦できましたよ!」 いいタイミングで、ソラが顔を出した。 「あれ、お客様ですか?追加でお二人分なら、用意できますから、どうぞ皆さんダイニングへ」 打ち立ての蕎麦が食べられるというだけで、皆の顔は明るくなった。

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