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第27話「僕はシュウと年を跨ぐ」

【12月31日水曜日23:50】 一緒にめちゃくちゃ美味しいカニ鍋を食べ、一緒に温かい風呂に入った。 今日は一日、作業が中断することが多かったから、本当はもう少し椅子を削りたい。 しかし、一緒にいなければならない課題により、シュウにも作業場へに同行してもらわなければならない。 申し訳なく思い迷っていると、シュウが察してくれる。 「椅子を作りながら、年を越すのはどうですか?私も作業するキヨを眺めていたいです」 だから、僕らは二人で作業場にいる。 どこか遠くから除夜の鐘が聴こえてきた。 「ねぇ、シュウ。ちょっと外を見ていて」 「外?真っ暗で何も見えませんよ」 「いいから!」 僕はシュウの視線をずらし、鉋(かんな)で削った鉋クズを束ねる。 それを折り畳み、真ん中を紐で縛って、両端をハサミでカットした。 形を整え、まん丸になるようにハサミで整えれば、林檎ぐらいの大きさの木屑ボンボンが完成する。 「目をつぶって」 「今度は目を閉じるんですか」 そう言いながらもシュウは素直に従ってくれる。 吊り下げるための紐をつけたボンボンを、シュウの鼻のあたりで揺らした。 「いい香りがします」 「どんな匂い?」 「甘くて、少しスパイシーで、森の中にいるようなウッディな香りですね」 「シュウがいつも纏っている匂いに似てるよね」 「言われてみれば。そろそろ目を開けていいですか?」 シュウは目の前でゆれるボンボンに手を伸ばす。 「これは?」 「マホガニーの削りカスで作ったボンボン。この木、いい匂いがするから、ベッドの横に吊るそうよ」 「私への贈り物……だと思っていいですか?」 「ごめんね。こんな簡単なもので」 シュウは首を横に振る。 「いいえ、とてもとても嬉しい。ありがとう、キヨ」 また「ボーン」と除夜の鐘が鳴った。 そろそろ日付が変わる。 シュウはスマホで、秒数まで分かる時計を表示してくれた。 「あと1分です」 「10、9、8、7、6、5、4」 二人で声を揃えカウントダウンをする。 こんな風に誰かと年を越すなんて、初めての経験でワクワクしてきた。 「3、2、1、明けましておめでとう!」 僕らはせめてもの接触だと、手を握り合う。 「キヨ。今年はずっとずっと一緒にいましょう。私の傍で笑っていてくださいね」 飛び上がるほど嬉しいその言葉を聞きながら、フクロウさんからの伝言を思い出す。 試験内容の三択、このままではシュウは「自分の籠に入れる」と答えるだろう。 あぁ、どうしたらいいのか。 昼間「試験が失格だった場合どうなるの?」と岩山に尋ね、返ってきた言葉を思い出す。 「フクロウはえげつないですから。坊ちゃんとシュウが二度会えなくなるよう、何か仕掛けてくるかもしれません」 思わずため息をつきそうになる。 「どうしました、キヨ?新年早々、浮かない顔ですね」 「ううん。そんなことないよ!でも少し疲れたかもしれない。もう寝ようか」 「そうですね。このボンボンの香りで、よく眠れそうです」 シュウは、僕を安心させるかのように、にっこりと笑ってくれた。

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