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第29話「僕は確信に触れる」
【1月1日木曜日13:00】
別荘管理人のソラが準備しておいてくれた雑煮を、シュウが仕上げ、朝食に出してくれた。
三段重ねのお節料理もテーブルに並べられ、正月らしい、正月が始まる。
食事のあとは、作業場に籠った。
進捗状況は、順調だ。
骨太なキングチェアが削られて、一回り細いアームチェアになったけれど、存在感は失われていない。
ツヨシに付け足されたヘッドレストみたいな蛇足は削ぎ落とし、背が低くなった分のバランスを他の部位で取った。
あとは時間いっぱいまで、細部のこだわりに時間を注げば、満足いくものが出来上がりそうだ。
実質、明日には削りを終わらせなくてはならない。
明後日は、下地剤とワックスを塗る必要があるから。
もうすぐ、シュウが、昼食を運んできてくれることになっている。
それまでもう少し、作業を進めたい。
—
今朝9時に、フクロウさんから届いたメッセージは、いつもより少し長かった。
『明けましておめでとうございます』
ご丁寧な挨拶で始まる。
『文鳥のための鳥籠卒業課題その4。その別荘には監視カメラが複数台設置されている(1/4には撤去することを約束する)。カメラの位置は明かせないが、死角にて、声や表情を変化させず性的な接触を持つことを許可する。また、二人の思い出を振り返ること』
岩山が言っていたとおり、僕らはどうやら監視されている。
「カメラのこと、シュウは知ってた?」
「キヨがここへ来た日、私の指示で電気工事が入ったとソラが報告してきました。ですから、何かあるだろうとは」
シュウは意外と冷静だ。
「元々、文鳥の卒業へ向けた課題と試験は、フクロウ指定の場所で行うという話でした。私が無理を言って、この別荘で使わせてほしいと頼んだのです。ですから、多少のことは目をつぶろうと」
「そっか」
「私はこの課題と試験、理にかなっていると思っていますよ」
「え、そう?」
「私たちの場合は多少特殊ですが、暗闇でしか会ったことのないカラスと文鳥が、個と個の付き合いをしたいと言い出したのです。両者の立場はおそらく大きく違います。鳥籠としては、今後のトラブルを避けるため、ワンクッション置きたいはずです」
「あー、なるほど。カラスはセレブばかりだからね」
「フクロウの監視の元、二人で蜜月な日々を過ごす。愛を知り、愛を教える。それは課題により、起伏に富んだものとなり、相手の知らない面に触れることができる」
確かに、課題もなく五日間を過ごすのとは、違うかもしれない。
「シュウはさ、試験がどんなものか知ってるの?」
さりげなさを装い問うが、どんな答えが返るのかドキドキとする。
「具体的な内容は知りませんが、三択だと聞いています。フクロウの設問に対し、答えは3つ。フクロウが正解と設定した答えを選べなければ、もう文鳥とは会えない」
「会えない……」
「これは、わざと間違えることができる、ということだと思います」
「え?」
「カラスとして、この文鳥と上手くやれそうにない、愛を与え続けることができない、と感じた場合、わざと答えを間違えれば、もう会わなくて済むのです」
「なるほど……」
「でも、大丈夫ですよ、キヨ。私はちゃんと正解を選びます。キヨにずっと私の傍にいてほしいと願っている以上、間違えることはないでしょう」
何と答えてよいのか、わからない。
「そろそろ、作業場へ行くよ」
「えぇ、頑張って。課題の「思い出を振り返る」の件は、私に任せてください。今夜をお楽しみに」
……こうして僕は作業場に籠っているのだ。
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