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第30話「僕の思い出の品々」

【1月1日木曜日19:00】 「……キヨ、キヨ」 また深く集中していた。 「あぁ、シュウ」 「椅子、出来上がってきましたね。いい。うん、とてもいいです。キングチェアとは、随分と雰囲気が変わって全くの別物です」 「これなら、フェイジョアのエントランスに相応しい?」 「えぇ、もちろんです。キヨの作品だから、ではなく、そこはオーナーとしてきちんと判断しますが、かなりのクオリティとオリジナリティがあると言えるでしょう」 「よかった……」 「写真を撮らせてもらいますね。コラボする華道家に送りたいので」 シュウはバシャバシャと何枚も写真を撮って、その場ですぐ送信していた。 — 「さて。キヨ、今日はもう作業は終わりです。これで目隠しをしてください」 「ネクタイで、目隠し?」 「えぇ。私が縛ってあげますから」 シュウはなにかを企んでいるような顔をして、僕の目を塞いだ。 そしてしっかりと手を繋いで作業場を出て、渡り廊下を通り、ガラス扉から母屋に入る。 目隠ししていても、どこを歩いているか分かる程には、僕もこの別荘に馴染んできた。 ダイニングに入ると、想像していたよりは暖かくない。 「暖炉、ついてないの?」 「えぇ、今日はこっちです。ここでスリッパを脱いでください」 言われるままに靴下になれば、何か分厚い敷物を踏んだような感触を覚える。 「ゆっくり、座って胡坐をかいて」 目をつぶったまま、その場に座るというのは存外怖くてシュウの手をきつく握りながら腰を下ろす。 予告もなく「シュッ」と、目隠しのネクタイが外された。 「うわぁーーー」 「どうです?キヨ、懐かしいでしょう?」 目の前には小さなコタツがあった。 足を入れれば、優しい暖かさが伝わってくる。 机の上には、籠に入ったミカンものっていて、10年前のアパートが再現されていた。 「すごい!これって……」 「ここを見てください」 シュウが指差す先を見れば『キヨチカ』と小刀で名前が彫ってあった。 今の今まで忘れていたけれど、高校生の僕がこれを彫った記憶が蘇る。 「このコタツ、保管されていたの?」 「えぇ、別荘の倉庫の奥深くに。私にとって思い出の品なので。流石にコタツ布団は保存していないので、毛布で間に合わせましたけれど」 僕は胸がいっぱいになる。 またこのコタツにシュウと入れる日が来るなんて、思ってもみなかった。 「これだけじゃ、ありませんよ」 シュウはキッチンから何かを運んでくる。 「あーーー!たこ焼き器。これも取っておいてくれたの?すごい、すごい」 「電源が入るか不安でしたが、大丈夫でした」 「てことは、今日はたこ焼き?」 「ミカンはソラが用意してくれてありましたが、残念ながらたこ焼きの粉やタコはありません。でも、小麦粉とウインナーでやってみましょうか?」 シュウはネットで色々調べたらしく、小麦粉に出汁や卵を入れ、生地を作ってくれていた。 「10年ぶりだよ。たこ焼き焼いて食べるの」 「私もです」 下手くそな二人で、ワーワー言いながら焼くたこ焼きは、不格好でも、本当に楽しかった。 途中で、ウインナーが尽き、お節料理の具材を入れたりもする。 かまぼこや、黒豆は意外と美味しかった。 段々と悪ふざけし始め、昆布巻きや田作りを入れ始めたあたりで、シュウに怒られた。 こんな風に注意されることすら懐かしく、僕はずっとはしゃいでいた。

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