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SSその7「フクロウの正月」
《フクロウ》
ここは東京駅近くにある、クラシックなホテルの高層階。
私はこの部屋で仕事をし、この部屋で暮らしている。
フクロウと呼ばれている私の仕事道具は、スマホ一つだ。
元日である今日は、ホテルの日本料理店で、1人、フグ鍋を食べ、日本酒を飲む。
板長とも顔見知りで、私の好みに具材を合わせてくれるので、助かる。
正月も鳥籠は稼働していた。
電話が入れば、カラスと文鳥をマッチングさせ、一夜の行為を斡旋する。
けれど今宵は、閑古鳥が鳴いていた。
斡旋業と並行し、現在は卒業課題に取り組んでいるカラスと文鳥が一組あった。
彼らの動向が私にとっては、年末年始の楽しみだ。
本来、卒業試験に金銭は動かない。
しかし今回は、鳥籠の母体となる組織と、そのライバル関係にある組織との因縁が絡み、5億円という金が動いた。
さらに、彼らはカラスと文鳥として出会っただけの仲ではなく、10年前、教師と生徒だったという。
これらにより、話はグッと面白くなっている。
—
カラスの所持している別荘には、監視カメラを設置してある。
私はフグ鍋を食しながら、ダイニングに置かれているカメラ映像をスマホで眺めた。
随分と楽しそうに、たこ焼きを作っている。
彼らは仲睦まじく、疑うことなくその愛は本物なのだと分かった。
だが。
年末に岩山を使って、揺さぶりをかけてある。
文鳥は、試験の問題と答えを知っているのだ。
もし、カラスが違う選択をしたら、と怯えているはずだ。
それでも、答えそのものをカラスには教えられない好ましい誠実さが、彼にはある。
私の予想は3パターン。
その1:文鳥はカラスを信じ全てを託す
その2:文鳥は言葉を尽くして自分の気持ちを説明し、正解へ導こうとする
その3:文鳥は結論が出ることが怖くなって逃げ出す
その3もありえると思う。
彼にはそういう甘さ、幼さがあるから。
さて。
今夜はもう部屋に戻って、眠ることにする。
彼らがたこ焼きにお節の具材を入れ始めたところで、私はスマホを消した。
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