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SSその8「スイートルームのベッドで」
《シュウ》
電話の向こうのキヨチカの声は、随分と寂しそうだった。
キヨチカにしても、雪の別荘に一人閉じ込められているようなものなのだ。
不安になるのも、無理はない。
しかし、ぶっきらぼうな態度は高校生の頃の彼を思い出し、懐かしさを覚えた。
シャワーを浴び、バスローブを羽織り、ベッドへ横になる。
窓の外は寒そうだが、空調が行き届いたフェイジョアホテルのスイートにある自室は、暖かい。
ウトウトと微睡むと、泣きながら自慰をしているキヨチカの夢を見た。
どうしたのだろう。
どうして、キヨチカはそんなにも不安を抱えているのだろう。
これからは、一緒に居られるのに。
キヨチカがしたいことは、全部させてあげるのに。
そのために私は、父の家業を継ぎ、力もお金も手に入れたのだから。
家と決別したキヨチカとは、反対の道を選択したのだから。
夢の中のキヨチカが、酷くイヤらしい顔をして達した……。
私は欲情を誘われ、自分自身に手を伸ばす。
「キヨ。泣かないで、キヨ」
彼の切なくも気持ち良さそうな顔を思い浮かべ、私は手を動かす。
昂りは硬くなり、腰が揺らめいてしまう。
「あぁ、いい、キヨ、キヨ、いっしょに、いっしょに……」
握った手の動きは、スピードを増し、快楽を追い求める。
「んぁ」
欲望が放たれた瞬間、夢の中のキヨチカが消えてしまった。
キヨチカを手放したくない。
その手をずっと握り続けたい。
—
明日には鳥籠の卒業試験だ。
私は何としても、正解を選ばなければならない。
キヨチカをそばに置くために。
ずっと一緒にいるために。
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