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第36話「僕も空も晴れ渡る」

【1月3日土曜日07:30】 ポツポツ、ポツポツ……。 雨音が聴こえているのかと思ったら、違った。 屋根や木々から溶け始めた雪が、水滴となり落ち続けているのだ。 ベッドから降り、カーテンを開けると、空は青く晴天だった。 雪に光が反射し、とても眩しい。 目が痛いくらいだ。 誰の足跡もついていない雪は美しく、触ってみたくなる。 僕は部屋着として用意してもらった中で、最も暖かそうな服に着替えた。 そして倉庫に置いてあった誰かの長靴を勝手に履いて、雪の庭へと出る。 ギュッと雪を握った。 「冷たっ」 手袋は見当たらなかったから、僕は素手で大きな雪玉を作り始める。 指先の感覚はすぐに麻痺して、真っ赤になった。 それでも、途中ではやめない。 単純に楽しかった。 僕が生まれ育った街には、雪が積もることは無かったから。 雪だるまを作ったのも初めてだ。 僕は何かを作るのが好きなんだと、改めて思い知る。 雪でシンプルな形の椅子を作って、その上に雪だるまをのせた。 目とか口は、何でつけたらいいだろう? 辺りを見渡しても、使えそうなものはない。 「そうだ!」 僕はダイニングルームへ行き、ミカンを取ってくる。 皮を剥いて、その皮で目と口を作った。 上手い具合に、笑っている顔が出来上がる。 「うん、いい感じ!」 雪を照らす太陽は、僕の心を持ち上げてくれた。鳥籠の試験に対し、いつの間にか「なるようになる」という、達観した気分になっている。 当日になって、肝が据わったというところだろうか。 いや、強がってるだけかもしれない。 それでも、グズグズ泣いているよりずっといい。 「寒っ」 気がつけば裾や袖がびしょ濡れだ。 僕はスマホで雪だるまの写真を撮り、シュウへ送信した。 — シャワーを浴び身体を温め、餅を焼いて食べた。 前向きになった気持ちで作業場へ行き、昨晩ほぼ完成へと導いたアームチェアを眺める。 一旦は、完璧だと判断したフォルムだったが、前脚の太さが気になり出す。 もう少し削って、若干細くしたほうがいいと思えてきた。 でも、だとしたらそれに伴い、アームも少し削りたい。 今朝から下地剤を塗る予定だったが、半日その作業をずらせば、スケジュール的にできなくはないはずだ。 一度気になってしまった以上、ここで直さなかったら、エントランスに飾られたあとも、気になり続けてしまうだろう。 「よし、やるか」 僕は再び、削り作業を始めようと、刃物を研ぐ。 そんなタイミングで、シュウから電話がかかってきた。 『キヨ、雪だるま、よく出来てますね。私が帰るまでに溶けないといいのですが』 「早く戻ってきてよ」 『えぇ、8:41東京発の新幹線に乗ります。中軽井沢駅には、10:03に到着予定です』 「駅からは?」 『ソラに迎えを頼みました。ですから、ソラと一緒にそちらへ行きます。それまで一人ですが大丈夫?』 やはり昨晩の電話のぶっきらぼうな態度で、心配をかけてしまったようだ。 「大丈夫。シュウ、戻ってきたら、雪だるまを見て。それから僕の話を聞いてくれる?」 『えぇ、もちろんです』 電話を切ったときには心の靄が晴れていて、僕は深く深く集中し、作業に没頭した。

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