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第6話

 「さすが金勘定が得意なだけあって計算は早いな!」  「そりゃ一ギルだって無駄にしたくないからね」  「よし、その調子で文字の練習に進もう」  「うぇ~ちょっと休憩しようぜ」  ロキがテーブルに突っ伏すとファエルにぽこんと頭を殴られた。計算は楽しいが、文字の読み書きは苦手である。  「でも名前は書けるようになったじゃん」  「あれだけ宿題を出されれば誰だって書けるようになるよ」  「ちゃんと一晩で終わらせて偉いぞ」    今度はゴシゴシと乱暴に頭を撫でられた。絶対毛が三本くらい抜けた気がする。  ファエルと勉強するようになり、一週間が過ぎた。思ったよりも楽しく充実している。  初めて自分の名前を書けたときは胸が震えたものだ。  「この調子でクラスト様にお手紙を書いたら?」  「なにを書けばいいかわからない」  「なんでもいいんだよ。天気がいいですね、とかお元気ですか、とか」  「毎日顔合わせてるのに?」  「気持ちを文字にするのもいいよ」  「そういうもんかな」  ロキが首を傾げていると再び頭を撫でられそうになったので、慌てて叩いた。また毛が抜かれたらたまったものではない。  苦笑いを浮かべたファエルは羽ペンを片付けて立ち上がった。  「じゃあここからやっておきなよ。できるところまででいいから」  「ありがとう。仕事忙しい?」  「庭師は僕一人だからね」  「オレも手伝えたらいいんだけど」  「大丈夫だよ。ロキにはロキの役目があるじゃないか」  「……うん」  じゃあな、とファエルは軽快な足取りで部屋を出て行った。扉が閉まるとずんと気分が沈んでしまう。  デイビットやファエルはクラストのために役立つ仕事を任されている。でも自分はどうだ。  夜の相手だけであとは自由に過ごさせてもらっている。最初はそれでいいと思っていたが、デイビットたちにやさしくされればされるほど申し訳なさが膨らむ。  (やっぱりもう少し仕事を振ってもらおう)  そうと決まれば善は急げである。  ロキはクラストの執務室に向かった。  ノックをすると「入れ」と声が返ってきて扉を開ける。  「失礼します」  「俺の部屋に来るとは珍しいな」  書類を読んでいたらしいクラストが目を丸くしている。確かに初めてクラストの部屋に来た。  執務室には本棚がいくつもあり、難しそうな本が整然と並んでいる。テーブルには書類がうず高く積まれていて、広げられたままの地図もあった。  見たことのないものばかりで興味深く周りを観察してしまう。  「見てていいぞ」  「あ、でも邪魔じゃないですか」  「問題ない」  「ありがとうございます」  ロキは迷わず本棚に向かった。文字を書くのはまだ難しいが、読むことはだいたいできる。  「せ、い、じ、の、き、ほ、ん」  「随分読めるようになったな」  「ファエルが教えてくれました」  クラストに褒められると飛び跳ねたくなるほど嬉しい。いい気になって次から次へと背表紙を読むととんでもないものが目に入った。  「……せ、く、す、の、き、ほ、ん」  かあと頭に血がのぼる。クラストが慌てて本をひったくり、後ろ手に隠した。彼の顔も林檎のように真っ赤に染まっている。  「勉強してくれてたんですか」  「……最初に怪我させたからな。もう痛い思いはさせたくないんだが、理性が飛ぶとだめだな」  「あの……最近すごく気持ちいいんです。クラスト様に奥を突かれるとこうぐわ~ってなります」  ロキはどれだけクラストとのセックスが楽しいのか熱弁した。途中同じ話を繰り返したり、文法がしっちゃかめっちゃかになっていたがかまわず続ける。  これ以上自分を責めて欲しくない。ロキは少ない語彙を使って一生懸命に思いを伝えた。  「もういい」  クラストが顔を手で覆っている。髪の隙間から見える耳殻が可哀想なくらい真っ赤だ。  「ロキに辛い思いをさせていないようで安心したよ」  「自信持ってください!」  「ふふっ、ロキは変わった奴だな」  クラストが目尻を綻ばせた。まるで薔薇が咲くような美しさにしばしば見惚れてしまう。  「そういえばなにか用があったのか?」  「あぁ、そうです」  ロキは背筋を伸ばした。  「オレにも仕事をください」  「いまも働いてるじゃないか」  「それだけじゃ釣り合わないくらいよくしてもらってます。なんだか申し訳なくて」  「おまえは欲がないんだな」  「逆です、逆。欲深いからもっと働いて報酬をせしめようとしているんです」  親指とひと差し指で丸をつくるとクラストは声を出して笑った。子どもっぽい笑い方にとくんと胸が鳴る。  「そうか、そうか。俺からもっと金を引き出そうとしているんだな」  「いや……いまのは冗談ですよ?」  「わかった。そういうことにしてやろう」  冗談が通じなかったらしい。それとも貴族故に素直な性格なのだろうか。  「では仕事をやろう」  「なんでもやります!」  ロキは前かがみで言うとクラストはわざとらしくコホンと咳払いをした。  「俺の仕事を手伝って欲しい」  「でもオレ、まだそんなに文字が読めないですよ? 計算も難しいのはできないし」  「大丈夫。ロキにしか頼めないことだ」  役目を与えられたことが嬉しくて、ロキは大きく頷いた。  「精一杯お務めさせていただきます!」  (思っていたのと違う)  ロキは手元にある絵本から顔をあげ、すぐ横にある端正な顔を見つめた。ロキの視線に気づいたクラストが「どうした?」と首を傾げている。  「これ、本当にお仕事ですか?」  「立派な仕事だ。ロキ以外に頼めないだろ」  「……」  クラストから頼まれた仕事は彼が執務室にいる間、膝の上に乗ることだ。さすがに目上の人の膝に座るわけにはいかないと抵抗したが、「これも大事な仕事だ」と言われてしまうと言い返せない。  雇い主の立場が上だと長年の労働で刷り込まれてしまっている。  (よくこんな状況で集中できるよな)  だがロキの心配をよそに、書類仕事をしているクラストは滑らかに羽根ペンを走らせている。「こくもつ」や「ぜいしゅうほうこく」と大切な書類なのが一目でわかった。  それを見てもいいのかわからず、ロキは部屋から絵本を持って来て、クラストの膝の上で大人しく読んでいる。  (これじゃ子守りをしてもらってるみたいじゃん)  子どもに戻ったようでこそばゆい。でも不思議と嫌じゃなく、クラストと触れている左半身が心地いい。  少し考えることがあるとクラストはロキの身体をまさぐり始めた。決していやらしい意味ではなく、犬猫を撫でるようにやさしい。次第に気持ちよくなってきてしまい、ロキは欠伸をこぼした。  「眠いか?」  「ん……ちょっとだけです」  「じゃあ俺も休憩しよう」  クラストは羽根ペンを放り投げるとロキを軽々と抱き、地続きになっている扉を開けた。  部屋の内装のきらびやかさに驚く。花瓶や絵画の調度品が見たこともないほどの高級品で、床が眩いほど光っている。一目でクラストの自室だとわかった。彼の部屋に入るのは初めてだ。  泳げそうなくらい広いベッドの上には枕がたくさんある。そこに寝かしてもらうと雲の上にいるかのようにふかふかだ。  「本当に寝るんですか? お仕事は?」  「急ぎのものはないから問題ない」  もしかしてロキに気を使ってくれたのだろうか。仕事が欲しいと言ったくせにこれでは邪魔をしている。  「やっぱり部屋に戻ります」  「だめだ」  ロキがベッドからおりようとすると腕を掴まれた。薔薇色の瞳が鋭い光を放ち、反論する言葉を飲み込んだ。  クラストの考えがよくわからない。  (もしかしてクラスト様にとってオレはペットなのか)  それなら納得する。食って、寝て、身体を重ねてと動物に必要な本能を最優先させていた。  やさしくされているからと勘違いしていたのかもしれない。ならペットらしく振舞おうじゃないか。  ロキがベッドに戻ると隣に入ってきたクラストが肩までデュベをかけてくれた。肌触りのいいデュベに眠気がじわじわと襲ってくる。  気持ちは複雑なのに欲求は素直らしい。本当に動物になった気分だ。  うつらうつらしていると額に口づけが落とされた。こめかみ、頬、首筋とおりていき、最後にまた額に戻る。  「もしかしてシたいんですか?」  クラストに呪いが発動した兆候はない。  だが彼も男だ。呪いとは関係なく、処理したくなったのだろうか。  ロキがシャツのボタンに手をかけるとやんわりと制された。  「違う」  「でも」  「いいから寝ろ。眠いんだろ?」  「お相手してからでいいです。あ、準備はしてあるのですぐできますよ」  ロキが笑うとクラストは自分が傷ついたように眉を寄せた。どうして悲しそうな顔をするのだろう。  「なにも考えるな」  背中に腕を回されて、ぎゅうと抱きしめられる。  クラストの心臓がとくとくと心地よい音色を奏でていた。まるで母の胎内にいたときのような安心感がある。  眠気に抗えず、ロキが瞼を閉じると瞼に口づけを落とされた気がいた。  日課であるクラストの膝の上で絵本を読んでいたら、ある書類の文字がロキの目に飛び込んできた。  「け、ん、こ、く、さ、い」  「難しいのによく読めたな」  「すいません、これ見ちゃだめですよね」  慌てて絵本に視線を戻すと「問題ない」と返された。  「機密情報ならロキの前ではやらない」  「オレが読めなくても?」  「誰であろうと関係ないさ。それより建国祭に興味があるのか?」  ロキは孤児院で子どもたちに新しい服を仕立ててあげようと思っていた話をした。  クラストは難しい顔をしている。  「悪いが孤児院の者と会わせることは難しい」  「いえ、そういうわけじゃなくて……稼ぎ時だなと」  建国祭は近隣の国からも来る人が多い。みんな気が大きくなるのか羽振りがよく、一年で一番稼げるのだ。  うずうずとしてしまうのはずっとそこで働いていたからだろう。  クラストがくすりと笑った。  「建国祭の前に一度街に戻るつもりだったんだ。行ってみるか?」  「外に出ていいんですか?」  「あぁ。だが顔を隠して俺のそばにいてもらうけどな」  「嬉しい」  生まれ育ったあの街にはたくさんの思い出がある。布屋の店主や飯屋の親父、パン屋のおばちゃんたちの顔が浮かぶ。  そして最後にはマザーと子どもたちだ。  街を離れてから三か月近く経っている。みんな変わらず元気にしているだろうか。  にこにこと絵本を読み始めるとクラストに頭を撫でられた。  「……すまない」  「どうして謝るんですか?」  「金と対価でおまえの大切な場所を奪っただろ」  ロキは振り返って彼の頰に手を添える。  「オレはここにいられて幸せですよ」  ロキがクラストに向ける温かい気持ちは子どもたちの笑顔を見られたときと達成感と似ている。  だけど指一本分、なにかが違う。  コインの裏表のように意味が少しだけ違うような気がする。  なぜか理由はわからない。けれどいま幸せだという事実は真実だ。  目を大きく見開いたクラストは呆然とロキを見下ろしている。まさかそんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。  ロキのいまの状況をつくってしまったことにクラストはずっと後悔していたのかもしれない。  ――「気持ちを文字にするのもいいよ」  ファエルの言葉が浮かぶ。確かに文字にするとより深く伝わるような気がする。  「あの……これ」  ロキは絵本に挟んだ手紙をクラストに渡した。  《くらすとさま いつもありがとう ろき》  初めて書いた手紙は斜め右に上がってしまっている。でも想いはたくさん込めた。  「ちゃんと読めました?」  「あぁ、すごく嬉しい」  ぎゅうと抱きしめられ、クラストの温かさに包まれると心が解れる。ずっとこの腕の中にいたい。  首筋に口づけが落とされびくりと肩を跳ねさせるとクラストの熱い吐息が頬にかかった。  「……はぁ、すまない。呪いが……」  クラストは苦しそうに顔を歪めた。だが頰にライラックの紋章は現れていない。  症状は出ているのに紋章が浮かばないなんてことがあるのだろうか。  (やっぱり力が弱まってきてるのかも)  どちらにせよクラストは苦しそうなのだ。早く解放してあげたい。  「ベッドに行きます? それともオレの部屋?」  「……いい。このままで」  クラストは立ち上がるとロキを机の上で押し倒した。書類や筆立て、絵本などがバラバラと落ちていく。それに気を取られていると頬に口づけが落とされた。  唇で触れられる箇所がどんどん熱を帯びていく。首筋を強く吸われ、ピリリとした痛みが走る。  クラストはロキのシャツをたくしあげ、二つのささやかな突起を凝視している。  そこは一度も触れられたことがない。いつも自分で慰めていた。  「クラスト様?」  「全身が桃のようにピンク色をしているんだな」  「へっ、あぁ……そこっ、やぁっ!」  クラストは赤い突起を口に含んだ。ねっとりとした舌が粒を吸う。ちゅうっと音をたてられると快楽が腰に響いた。  反対の手で乳首をこねくり回される。悦びを示すように固く尖っていた。  背中が浮くと反動で机の上のなにかが落ちた。もう気にしている余裕もない。  開かれた足の間にクラストが身体をいれてきて、ロキのスラックスを脱がしにかかる。  「だめ、ぅんっ、んん……あっ」  突起を舐めていた舌が臍まで下りてくる。くるくると臍の輪郭を辿り、茂みを越えてロキの性器に辿り着いた。  見なくても勃起しているのがわかる。きっと先端から恥ずかしげもなく愛液をこぼしているのだろう。  「ここも可愛いな」  「いやです……クラスト様っ、だめっ!」  ロキの制止を無視してクラストは性器を口に含んだ。熱い咥内に性器がぐんと張りつめる。根本から裏筋を舐められて、亀頭の間を割るように舌先をぐりぐりと押しつけられる。射精感が一気にのぼりつめ、ロキの脳内が白く靄がかり始めた。  クラストにじゅっと竿を吸われるたびに甘くイってしまう。でも頂点を極められないので、快楽にずっと犯されていて頭がおかしくなりそうだ。  「イきたい、あっあ、イきた……あっん」  「いいよ」  クラストは頭を上下に動かした。皮が咥内に擦れて気持ちいい。違った刺激に駆け足で頂点まで向かう。  「あっ、あーー」  意識が一瞬飛び、ロキは下肢を痙攣させながら達した。クラストはなおもちゅうと吸っており、一滴残らず飲み下した。  「はぁ、あ……すいません」  「問題ない」  ロキが手を伸ばしてクラストの小づくりな頭に触れると顔をあげてくれた。まるで見せつけるみたいにロキの性器に頬を寄せ、赤い舌でぺろりと舐められる。その妖艶な仕草に腹の奥が疼く。  達して一度は冷静になれたのにクラストの煽るような仕草に身体が震えてしまう。物欲しそうに中が収縮している。  「だめ……欲しいっ、クラスト様……はやくっ」  ロキは自らの手で双丘を外側に引っ張り、蕾を曝け出した。仕込んだ潤滑油が臀部に垂れている。  早く、と急かすがクラストはゆったりとした動作でポケットから小瓶を出し、長い指にまとわりつかせた。  「息を吐くんだ」  言われるがまま深く息を吐くとクラストの指が中にはいる。事前に準備しておいたおかげか、難なく最奥まで到達してしまう。  ずぼずぼと抜き差しされているたびにロキの背中がしなった。身体が硬直してしまったようにビクりと大きく跳ねる。  「この分なら三本挿れても大丈夫そうだ」  一度指が抜かれてほっとしたのも束の間。一気に指が三本挿ってきて、ぐりぐりと中を広げられる。  ある一点を押されると強い悦楽を連れてきた。  「う、ん……あっ、ああぁ……そこっ、やっ……です」  「中が締めつけてきてるぞ」  「んんっ、」  ロキが首を振って嫌がってもクラストは止めるつもりがないらしい。何度もそこを押され、ロキは再び頂点を極めた。  「あっあ、ああ……」  噴水のように白濁をまき散らし、机や自分の腹にかかる。その熱さにも感じてしまう。  「そろそろいいかな」  クラストが立ち上がると前を寛げた。一度も触っていない男根が天井につきそうなほどぐんと張りつめている。ロキの中に入りたくてたまらないと訴えているようだ。  「俺の首に腕を回して」  「あっあぁ、んぅ……ふっん」  みちみちと音を立てながらクラストの性器が中に挿入ってくる。大きすぎる男根に一瞬怯んでしまうが、すぐ快楽に変わることをこの身体は覚えていた。  カリがロキの弱い部分を掠め、また背中がしなる。  クラストは腰を進めながら頰や首筋にキスをしてくれた。まるで労るような仕草にロキは一つ息を吐いてから首を傾げる。  「今日はいつもと違いますね」  「……そうか?」  「なんか、余裕がありそうというか」  紋章が出ないほど呪いの力が弱まっているせいだろうか。  でもそんなことしなくていい。  まるで大切な宝物に触れるようにされてしまうと勘違いしそうになる。  「いつもみたいにしてください」  「……たまにはいいだろ」  「でも……あっ、あぁ!」  「こっちに集中しろ」  腰を奥に叩きつけられ、ロキの意識がまた飛びそうになる。  クラストは小刻みに腰を揺らしながら的確にロキの弱い部分を突いた。それだけで果てたばかりの性器からまた愛液が滴っている。  「はぁ、んっんーー」  嬌声が止められない。唇を引き結んでいると頬に口づけが落とされる。  「聞かせろ、全部」  「でも……っあ」  「いいから」  問答無用だとばかりに激しく攻め立てられ、ロキは唇を閉じることができなかった。見上げるとクラストは満足そうに薔薇色の瞳を細めている。  「あっあぁ……!」  中の性器が硬さを増し、奥に熱を注がれた。その刺激にロキはまたしても達してしまう。  全身の力が抜け、後ろに倒れそうになるとクラストの逞しい腕に支えられた。引き寄せるように胸板に顔を押しつけられると汗に混じって雄の匂いがする。  「はぁ……はぁ、ふっ。クラスト様、大丈夫ですか?」  「ロキは平気か」  「大丈夫です。でも……」  床には書類やペン、本などが散乱してしまっている。それに机は体液や汗で汚してしまい、すごい有様だ。  「これ大丈夫ですか?」  「どうだろうな。ま、あとでどうとでもなる。それよりも」  中の性器はぐっと硬さを取り戻した。きゅんと肉壁が収縮を始め、ロキは目を白黒させながらクラストを見上げた。  「まだ足りない。そのまま掴んでろ」  「待って……あぁ!」  クラストは繋がったまま軽々とロキを持ち上げた。支えがなくなり、全体重をクラストに任せなければならない。そのせいでさらに未開の最奥へと到達してしまう。  「あっあぁ……んん……」  クラストはロキを抱えたまま器用に腰を揺らしている。  「ひゃ、クラスト様……落ちるっ」  「落とすわけないだろ」  「でも……あっ!」  ロキはクラストのシャツをしわができるほど強く掴んでも、気持ちよさが勝ると指が解けてしまう。支えがなくてもクラストがしっかりと掴んでくれているが不安だ。  「……じゃあこうだな」  クラストは少し移動してロキの身体を壁に押しつけた。背中に支えがある分、体勢は安定する。  だが壁とクラストに阻まれてロキには逃げ場がなかった。  より交接が深まっていく。  「はぁ、あっあ……」  「くっ……中の締めつけがすごいな」  「だめ、クラスト様……またっ」  再び白い靄に襲われ、ロキは夢中になってクラストにしがみついた。クラストの律動が激しさを増し、吐き出された精液と潤滑油がぐちゃぐちゃにかき混ぜられている。  「あっ、あーー」  ロキは身体を痙攣させながら欲を吐き出した。あとから追いかけるようにクラストも達している。  入り切らなかった精液がポタポタと床に垂れ、湖をつくった。  「はぁ……はぁ、もう、こんなところで」  「たまにはいいだろ。腹に力入れてろよ」  ゆっくりと腰を引かれ、性器を出された。栓がなくなり中に出された精液と潤滑剤がぽたぽたと滴る。これ以上床を汚すわけにはいかず、慌てて腹に力をいれた。  「うっん……く」  「上手に締めてるな」  「いいから、早く。お風呂」  「わかった、わかった」  クラストに抱えてもらいながら地続きになっている扉を開けた。彼の自室には風呂がついている。  だがクラストは風呂場には行かず、ロキをベッドにやさしく置いた。  「クラスト様?」  「ちょっと……待て。くっ……」  「どうされたんですか!?」  クラストはその場に膝をついた。肩を激しく上下に動かし、呼吸が荒い。  顔を上げた頬にライラックの紋章が浮かんでいる。  (呪いが発動してる!)  ではさっきは呪いの前章だったのだろうか。力が弱まってきているから紋章が出なかったのかもしれない。  発情して濡れた薔薇色の瞳に射貫かれるとぞくぞくと快感が駆けあがってくる。  先ほどまでクラストを受け入れていた蕾がきゅんと締まった。  ロキは後ろ手をつきながら腰を浮かし、蕾がよく見えるように両膝を外側広げた。  「……どうぞお使いください」  蕾から精液と潤滑油が混ざったいやらしい液が滴っている。  甘い蜜を出して蝶を誘う花になった気分だ。  だがクラストの表情は曇り、目元を押さえて首を振った。  (まただ。さっきはあんなに求めてくれたのに)  以前もクラストは呪いに抗おうとしていた。そんな無理をしなくていい。ロキを好きなようにしてくれて構わないのだ。  辛そうなクラストを見たくない。  「お願いします……興奮してるあなたを見て、オレも」  ロキは自らの指を蕾に挿れた。見せつけるようなに指を出し挿れする。  淫音にクラストが目だけこちらに向けた。見てくれている。ロキは指を奥第二関節まで挿れた。こぽりと音を立てて泡立った精液が落ちる。  「オレじゃ奥まで届きません。クラスト様……あ、お願い」  じゅぼじゅぼとわざと音を鳴らせたるとクラストの喉仏が上下した。興奮してくれていることに達してしまいそうな悦びが広がった。  膝立でベッドに乗り上げたクラストはロキを押し倒し、間髪入れずに挿入した。一気に奥まで貫かれ、快楽が全身を駆け巡る。  「はぁ、はっ……あ、ああっ! いいっ、そこ……あっ」  ロキがあられもない嬌声をあげるたびにクラストの動きが激しくなる。不満を訴えるようにベッドがギシギシと鳴っていたが、その音にすら煽られてしまう。  中が一層張りつめてきた。ロキの性器からも愛液が滴っている。  「もうだめ……イくっ、」  「くっ……」  同時にお互い達し、腰を戦慄かせた。クラストの射精は長く続き、ロキは何度も甘く達してしまう。  ようやく終わるとクラストは獰猛な瞳をロキに向けた。  「まだだ」  「……はい」  再び律動が始まり、ロキは歓喜の声をあげた。

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