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第7話

 健国際を明日に控え、城下町はかなりの賑わいを見せていた。  店の屋根を花やガーランドで飾られ、道行く人たちの装いもいつもより派手だ。  噴水広場では吟遊詩人と楽士たちがこの国の成り立ちから王への賛辞を歌っていて、聴衆たちは聞き惚れている。  目深にかぶったフードから城下町を見渡したロキは口元を綻ばせた。  「懐かしいか」  「はい。久しぶりですから」  三か月ぶりの街は相変わらず活気で溢れていた。足裏から伝わる石畳の感触すら愛おしい。  自分が生まれ育った街にこれといった愛着はないと思っていた。けれどいざ足を踏み入れると騒がしい人の声やパンの焼ける香ばしい匂いが懐かしく、胸をいっぱいに満たしてくれる。  いろんな店をクラストに紹介したいが、ロキだと知られるわけにはいかない。  ロキがレビーナ公爵家お抱えの娼夫だと知られ、クラストの風評を落とさないためだ。  ロキを屋敷に閉じ込めておけばいいのに、クラストは危険を冒してまで街に連れて来てくれている。  (ま、いつ呪いが発動するかわからないしな)  ずきりと胸の奥が鋭く痛む。自分の役目は最初からわかっていたことだと慰めてみても、痛みに苦しさが加わるだけだ。  クラストは足を止め、ゆっくりと商店を見回した。彼も公爵家の人間とは気づかれないように質素な服装にしているが、気品のよさが隠しきれていない。すれ違う女たちはみんな振り返ってクラストを見ている。  クラストは獲物を探す鷹のように目を鋭くさせた。  「この街に呪詛師がいると訊いたことがあるか?」  殺意の籠もった声音にロキはごくりと唾を飲み込んだ。  「さぁ……わかりません。呪いをかけた犯人がわかったのですか?」  「いや、まだだ。でもおおよその見当はつけている」  「さすがですね」  「それに呪詛師はこの街にいると情報は掴んだ」  ロキの手のひらにじっとりと汗が浮かんでくる。  「……どうしてこの街だと?」  「情報屋から買った話によると、この森の近くで呪符の売買が行われているらしい。顔や性別はわからないが、背格好からして子どもだろうと。ならそう遠くへは行けないはずだ」  情報屋、と心の中で繰り返した。  機密情報を高値で売る情報屋は荒くれ者に多いと聞く。  もしかして孤児院に粘着していたあいつらの仲間だろうか。  あいつらに金貨を貰っているところを見られている。  痕跡は消していたとはいえ、あれだけ派手に売買していれば遅かれ早かれ気づかれるだろう。  「呪詛師についてなにか知っていることはあるか? ロキも東の国から流れ着いたのだろう?」  「オレがどうして東の国出身だと」  「髪色を見ればわかる」  「そうですか」  ロキは黒い髪を引っ張った。いままで一度も触れられてこなかったが、クラストは薄々気づいていたのだろう。  もしかしてロキが呪詛師だと知って、カマをかけているのかもしれない。  「……なにも知りません」  「そうか。ファエルも知らないと言っていたし、もう少し離れた街かもしれんな」  「ファエルにも訊いたんですか?」  「あいつもおまえと同じ孤児院出身だろ? ならこの街にも詳しいと思ってな」  ファエルに嘘を吐かせてしまった苦しさに胸がさらに痛む。まっすぐで太陽のように明るいファエルには嘘なんて薄暗いことは似合わない。  申し訳なさが重なり、ロキは肩を落とした。  「ファエルがいいのか」  「なにがです?」  「……俺はおまえを手放す気はないぞ」  それはつまり生涯娼夫でいろということだろうか。薔薇色の瞳を見返したが、なにを考えているのか読み解けなかった。  「お、そこの兄ちゃん! うちのぶどう酒を飲まないか?」  ぐいっと顔を向けてきたのは飯屋の親父だ。知り合いの登場にロキは咄嗟に顔を伏せると背に隠すようにクラストが前に立った。  「すまない、酒は控えているんだ。なにか食べ物はあるか?」  「ならサンドイッチはどうだ? 肉をたっぷり挟んだチキンサンドがいま人気でね」  「それを二ついただこう」  「まいど!」  親父は手早くチキンサンドを用意するとクラストに渡した。そこでようやくロキの存在に気がついたらしく、顔を向けられた。  「そいつは兄ちゃんの弟かい?」  「あぁそんなところだ」  「そっか。うちの知り合いかと思ったんだがな。この子と同じくらいの背格好でロキっていう男なんだ。よく働いてくれて、助かってたんだよ」  自分の名前が出て、咄嗟に顔を上げそうになった。堪えるようにクラストのシャツを強く掴む。  「その子はいまどこに?」  「三か月くらい前に突然姿を消してな。そいつが住んでる孤児院に行ったら、マザーは「遠くに行った」の一点張りで。あれは人攫いにあったのかもしれない。あそこの孤児院はよく荒くれ者から金をせびられていたようだし」  親父の沈んだ声にロキは唇を引き結んだ。すると「ロキの知り合い?」と盗み聞きしていたらしいパン屋のおばちゃんが出てきた。  「お兄さん、ロキを知っているの?」  「いや……」  「突然姿を消しちまって、みんなとても心配してるんだよ。小さい頃はうまく仕事ができなくてね、きつく当たってしまったこともあったんだけどいつも笑顔で……その笑顔に私たちは救われてきたんだよ」  「そうそう。あの顔を見ると癒されるよな」  「つい多めに金を渡しちゃったりね」  「あるな」  飯屋の親父とパン屋のおばちゃんが淋しげに頷くのを見て、ロキは声が出てしまいそうな口を必死に押さえた。  (オレはここにいるよ)  そう言えたらどんなにいいだろうか。  言葉の代わりに涙がこみ上げてきて、頰を伝った。悲しい以外で泣くのは初めだ。どうやって止めたらいいのかわからない。  クラストのシャツを握っているとその手に温かいものが触れた。クラストの大きな手が包みこんでくれ、それを掴むと手を握ってくれる。  大丈夫だと言われているようで、また涙が溢れてきた。  飯屋の親父が続ける。  「あいつの両親はもう死んでるだろ……親戚も近くにいないだろうし」  「そうねぇ。一体どこにいるのやら」  「……元気にしている」  「あんた、やっぱりロキを知っているのかい?」  クラストに手を引かれ、走り出した。フードが取れて黒髪が見えると「ロキ!」と後ろから二人の声が響く。  ロキは空いた方の手を上げた。  「オレは元気にしてるよ! マザーによろしくね!!」    人気のない裏道まで来てようやくクラストが足を止めてくれ、ロキはやっとまともに呼吸ができた。久しぶり走ったせいか、生まれたての子馬ののように足がぷるぷると震えてしまっている。  「ごめんなさい。気づかれちゃだめでしたよね?」  「……ロキはこの街の人から愛されているんだな」  仕事を始めたばかりのときは酷い扱いだった。朝から晩まで働かされたのに賃金がもらえなかったり、煙突掃除で体調が悪くなり寝込んだこともある。  でも飯屋の親父やパン屋のおばちゃんのように厳しくも仕事を教えてくれ、きちんと賃金を払ってくれる人もいた。  その人たちのお陰でいまがある。  離れたからこそありがたい存在だったのだと気づけた。  「俺はつくづく最低な男だな。呪われても仕方がない」  「クラスト様は立派ですよ。お仕事もちゃんとされてて、こんなオレにもやさしくしてくれます」  「それは……」  言葉を止めたクラストは下ろしたこぶしを強く握った。  「俺は公爵家として立派になるよう自分を律してきた」  初めて聞くクラスト自身の話にロキは顔を向ける。  「勉強も剣術もなにもかも努力し続けた。お陰で評価をされている。だが……父は倒れ、レビーナ家を支えなければならないのに、この呪いのせいで俺は公に出ることができない」  いつ呪いが発動するかわからない状況で、社交界や外交に出るのは危険だ。クラストの醜聞が広がり、レビーナ家の威光がなくなってしまう。  そのことを危惧しているからクラストは郊外に拠点を移し、ロキの存在を隠しているのだ。  「レビーナ家の跡取りは俺しかいない。俺がこんなだから、病体の父はいまも表舞台から引くこともできないのだ。それが悔しい……」  「クラスト様」  「全部自分のためにロキを利用しているんだ。軽蔑しただろ」  皮肉めいた笑い方をしているのに頰が引きつって痛々しく映る。  ロキは背伸びをして、クラストの頰に触れた。  「いいえ。クラスト様がとても家族思いの素敵な方だと確信しました」  「ロキのすべてを奪ったのに?」  ロキは首を横に振った。  「何度も言っているでしょ。オレはクラスト様のおそばにいられて幸せです」  蕾だった気持ちが花開くようにロキの視界が薔薇一色に染まる。  (オレ……クラスト様が好きなんだ)  辛そうな顔は見たくない。いつも笑ってて欲しい。自分ができることならなんでもしてあげたい。  孤児院の子どもたちにも思ったことだ。だが決定的に違うことがある。  (クラスト様にオレのすべてを捧げたい)  この身体も心も命さえもクラストになら奪われても構わない。欲しいと強請られたら残さずあげる。  こんなにやさしい人に呪いをかけてしまったことに後悔した。お金のために呪符なんて売らなければよかった。  (呪符を受け取った貴族を探すしかない)  自分が死ぬのは最終手段にしよう。いまの呪いが解けたとしても、どこからか新しい呪符を手に入れられてしまえば元も子もない。  だがそれは同時に危険な賭けだ。下手に動いてクラストに呪詛師だと知られてしまう危険がある。  そんなことになったらクラストに軽蔑されるだろう。最悪処刑されてしまうかもしれない。  でも愛する人の手によって命を絶ち、厄災から払えるなら安いものだろう。  「くっ……」  「クラスト様!」  クラストが頭を抱え、膝をついた。頰にライラックの紋章が浮かんでいる。  (こんなときに……っ!)  裏道で人通りがないとはいえ、ここは居住地だ。飛び込み宿はない。  馬車を待たせている街に戻るには距離がある。  「こちらです」  ロキはクラストの身体を支えながら居住地の奥へと進んだ。この辺りは無人の家が多く、かなり廃れた一角になっている。  裏道を通り、どんどん奥へと進むと陽の光が届かない一角に来た。  「はぁ、はぁ……ふっ」  「すぐ楽にしてあげますから」  クラストを壁際に立たせ、スラックスを緩めようとすると手で制された。  「いいっ……もう、いいんだ。こんなこと……」  「クラスト様」  「……したくないっ!」  悲痛なクラストの叫びにロキの喉は締めつけられた。  呪いのせいで発情し、見境なく誰でも襲ってしまう自分をクラストが一番嫌悪してきていた。  公爵家を継ぐ者として恥ずべき行為に苦しんできたのをずっとそばで見ている。  (なにが大丈夫だよ。追い詰めてるのはオレじゃないか)  でもこんなにも苦しそうなクラストにしてやれることなんて一つしかない。  ロキは抵抗するクラストの手を掴んだ。  「このまま放っておいて見境なく襲ってしまうよりは、オレの方がいいですよ。口外しないし、準備もできてますから」  自分で言っておきながら虚しくなる。  心を伴わないセックスほど虚しいものはない。  だから呪いのせいでもクラストが一時でも求めてくれるのが嬉しかった。  自分を優先していたのはロキも同じだ。  「オレのことが嫌なら目を瞑っててください」  「ロキ……」  「任せてください」  こんなことでしか役に立てない。でもこんなことでもクラストを救うことができる。  ロキは再びスラックスに手をかけた。今度は抵抗されない。クラストの男根は天を仰ぎ、先走りで全体が濡れている。  ロキもスラックスを緩め、ポケットから潤滑油をだして指に馴染ませてから蕾に指を這わせた。  昨晩も受け入れたそこは容易く指二本を飲み込む。  「ちょっと舐めますね」  蕾を広げながらクラストの性器を口に含んだ。唾液をたくさん纏わせて、滑りをよくする。  茎全体がてらてらと光るとロキは満足げに口を離した。  壁に手をつき、クラストに尻を向ける。  「準備できました」  期待で腹の底がきゅんとしてしまう。触れていないロキの性器から愛液が漏れてしまっている。  クラストは鼻息荒く蕾を凝視したが、耐えるように首を横に振った。  「ダメだ……こんなこと……いつまでも続けられない」  「クラスト様」  「すまない……くっ」  「クラスト様!!」  倒れそうになるクラストを支えた。紋章の色がどんどん濃くなっている。呪符を使った者からの強い怨念を感じた。  これほど恨まれるほど一体彼がなにをしたというのだ。  唇を引き結んだクラストは眉を寄せて襲いかかりたい衝動を堪えている。  (そんな辛そうな姿、見たくないよ)  ロキはクラストのシャツを掴んだ。  「クラスト様、大丈夫ですから。お願いします」  「ロキ……」  安心させたくて笑顔を浮かべた。あなたを愛しているんですと伝えるように。  だがクラストの表情はどんどん曇っていき、ロキの細い身体は突き飛ばされた。  「嫌だ、ロキだけは……もうしたくないのに……」  (それってオレとのセックスはよくなかったってこと?)  首を絞められているかのように息が苦しい。  (妊娠できない女だったらよかったのかな)  なれもしないことを祈ってしまい、思考を追いやるように頭を振った。いまはそんなことしている場合ではない。  「ならこうしましょう」  ロキはリボンタイを解いてクラストの目元を覆い隠した。突然視界を奪われた彼は暴れようとするが力が弱い。  「視界され奪ってしまえば男も女も関係ありませんよ」  「ロキ……どうしてそこまで」  クラストには見えていないのにロキは笑顔を浮かべた。そして目元のタイに唇を寄せる。  「これがオレの仕事だからです」  クラストの肩が大袈裟なくらい跳ねた。限界なのだろう。ほんの少しの刺激だけでも彼の息が荒くなっている。  ロキは再び壁に手をつき、クラストの性器を蕾に当てた。右腕を伸ばし彼の腰を掴んで引き寄せる。  最初は抵抗をみせた隘路はクラストのものだとわかるとすぐに口を開く。ぬるぬると奥へと挿入っていき、ロキは自ら腰を揺らした。  「はぁ、あ……あぁ」  念願の熱塊にロキの思考は蕩けていく。苦しいのは最初だけで、あとはずっと快楽に犯され続けるのだ。  馴染む時間も惜しく、ロキはぎこちなく腰を揺らした。ばちゅんと肉同士がぶつかる音に歓喜の声が漏れる。  視線を下げるとロキの薄い腹がクラストの性器の形に合わせて膨らんでいた。ここにいる。いま一つになっていると思うと泣き出したいくらい嬉しい。  腰を揺らしながら腹を撫でるとクラストの男根がぐっと硬度が増した。  初めての体位なので気持ちいいところになかなか当たらない。もどかしくて何度も腰を揺すった。  でもいまは自分のことよりも、クラストを気持ちよくさせたい。  「んぅ……あっあぁ、んんっ」  「……わざと逃げてるのか」  「えっ、あっ、あああああぁあ!」  耳に息を吹きかけられたかと思うと腰を掴まれ、結合部分が深まった。弱い部分を的確に突かれる。  ロキは必死に壁を掴み、足裏がつりそうなほど爪先立ちをして耐えた。  肩越しに振り返るとクラストの口元が弧を描いている。  限界まで引き抜かれ、そのまま一気に奥まで貫かれるとたまらない。強すぎる快楽にロキの全身は震えてしまい、立っているのがやっとだ。  「クラスト様……無理、立てない……あっ、そこ、だめぇ」  「俺を気持ちよくしたいんだろ。しっかり立て」  尻を掴まれ、後孔を広げられる。潤滑油が零れ、太ももに伝う。  ロキは打ちつけられる快楽に耐えた。  「ひっ、うっ……あぁ、だめ。イく……でるっ」  「……出すぞ」  「あっあああああ!!」  最奥に熱い飛沫が溢れ、ロキも同時に達した。がくがくと下半身が震えてしまう。一滴残らず注ぎ込まれるとロキはその場に座り込んだ。  中からどろりとした精液が垂れてくる。  むわりとたちこめる雄の匂いに頭がグラグラした。  目線を上げると額に汗をかいたクラストはリボンタイを解いた。薔薇色の瞳が情欲に濡れている。  一度達したというのにクラストの男根は硬度を保っていた。茎全体がいやらしく濡れている。  (もったいない)  ロキは口を開き、茎についた精液を舐め取った。根本から舌を這わせ、亀頭の割れ目に残っている精液をすすると頭上からクラストのくぐもった声が降り注ぐ。  頭に手を差し込まれ、やさしく撫でられるともっと奉仕したくなる。  ロキはきれいに茎を舐め取って、ごくりと飲み込んだ。  立ち上がってクラストのスラックスを整えたが、中心の膨らみまでは隠しきれていない。  一回だけでは足りないのだ。  だがこれ以上ここで続けるわけにはいかない。  ロキは街を指さした。  「先に屋敷に戻ってください」  「ロキはどうするんだ?」  「ここをきれいにしてから向かいます。一度出したから少し理性は戻りましたよね?」  クラストは一度達すると短時間だが理性が戻る。下半身は勃起したままなので、隠す必要はあるが。  ロキの下半身は精液や潤滑油で汚れている。手持ちのハンカチだけでは心もとないので近くの川で水浴びをしてからの方がいいだろう。温かい季節でよかった。  ロキが適当に身支度をしているとぐっと腕を掴まれた。  「クラスト様?」  「俺がする」  「え、なにを……ああ!」  抱え上げられたロキは木樽の上に乗せられた。両足を蛙みたいに広がられてしまい、右足がクラストの肩に乗る。  衝撃に中の精液が出てしまい、嬌声が漏れた。  「そんなことしなくていいのです!」  「大人しくしていろ。怪我するぞ」  クラストの長い指に蕾の縁をなぞられ、ぴくりと足の付け根が震えた。ぐるぐると何度も円を描かれ、期待で胸が弾んでしまう。  ロキが大人しくなるとクラストはゆっくりと指を挿れてきた。  奥に注がれた精液を掻きだしているだけなのに、感じ入ってしまう。爪の先がロキの弱い部分を掠めると「あぁ!」と声を漏らしてしまい、慌てて口を押さえた。  (クラスト様は善意できれいにしてくださってるんだ。変な気分になっちゃだめ)  何度も自分に言い聞かせているのに達したばかりの敏感な身体は言うことを効かない。無意識に指を締め上げてしまい、クラストは目尻を下げた。  「中をきれいにしてるんだぞ」  「……わかってます」  「気持ちいいのか?」  「すいません」  「謝る必要なんてないさ」  クラストの声音はやさしく包み込んでくれる。ほっと力を抜くと指はゆっくりと抜かれ、こぽりと音を立てて精液が出てきた。  ポケットから木綿のハンカチを出し、クラストは一切の戸惑いを見せずに拭くので目を剥いた。  「ハンカチが汚れてしまいます!」  「ハンカチとは元々そういうものだろ」  「使い方が違います」  「それはこれのことを言っているのか?」  クラストが指さしたのはロキのリボンタイだ。彼の目隠しに使ったことを思い出し、かっと身体が熱くなる。  「ちがっ……そうじゃなくて」  「ふふっ。期待してるだろ」  「あああっ!」  再び指が挿り、弱い部分が押されるとビリっとした快楽が全身を駆け巡った。ロキの性器から再び愛液を滴らせている。  「終わったよ」  だが指はあっさりと引き抜かれ、丁寧に下肢を拭われた。スラックスを履かせてもらい、ついた砂を払ってくれる。  お互いの男根は主張するように一部分だけ膨れていた。  「早く屋敷に戻ろう」  「はい」  クラストが手を差し出してくれたのでロキは戸惑いながらも手を重ねた。  皮膚が厚くてゴツゴツした手のひらが小さな自分の手を包み込んでくれる。  その温かさに身体の芯に再び熱が灯りそうになり、ロキは慌てて頭を振った。

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