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第8話

 健国際当日。  ロキはレビーナ公爵家本家のパーティー会場横にある控室のカウチで暇を持て余していた。  カウチしかない控室には、申し訳程度に紅茶の入ったポットと軽食が並んでいる。  他に必要なものがあればデイビットを呼べばいいとクラストに言われてから半日が過ぎていた。  昼から行われていたパーティーは夕方になり、佳境に入ってきたのだろう。  壁越しでも来客の声が増えたのがわかる。音楽団の演奏はより一層華やかな音色を奏でていた。  ロキは絵本を読んだり、ファエルから出された課題をこなして時間を潰しているが、どれも終わってしまった。  部屋に閉じこもっている生活に慣れているとはいえ、暇なものは暇である。  (昨日以外、まったく外に出てないしな)  本家ではロキの存在はかなり厳密に隠されていた。  部屋はクラストと同室で許可なく外に出てはいけないし、物音も立ててはいけないとデイビットに言い含められている。  どうやらクラストが呪いを受けていることをレビーナ夫妻は知らないらしい。  でもいつ呪いが発動するのかわからないため、クラストの近くで身を隠すように待機させられているのだ。  だけどいまはクラストの部屋で待機ではなく、控室に押し込まれている。パーティーに参加しているクラストの呪いが発動したら相手をするためだ。  首が苦しくなりボタンに手をかけようとして、慌てて起き上がった。下手に引っ張ってボタンが取れたら大変だ。  ロキの装いは黒のジャケットとスラックスに白の襟付きシャツを着ている。万が一、部屋に誰か来たときのために給仕と見せかけるためだ。  上質な布地で光の加減によっては光沢がある。給仕の服にまで手をかけているのだろう。  (でも今朝のクラスト様はかっこよかったな)  クラストはダークグレーの礼服をまとい、黄金色の髪を後ろに撫でつけた髪型にしていた。つるりとした額が露わになり、大人の色香を纏わせていたのでどきりとしてしまったのだ。  まともに顔を見られないでいると「どうした?」と顔を覗かれてしまい、それにもどきまぎさせられた。  (日に日にクラスト様への想いが溢れてきちゃうよ)  思い出しただけでも頰が熱い。きっと熟したリンゴより赤いだろう。  だが礼服を身にまとったクラストはピリピリとした空気を発していた。  いつも別宅で仕事をこなしていたクラストが危険を伴って来たパーティーだ。どうしても顔を出さなければならない事情がある。  レビーナ公爵家は国王の次に地位が高い。国際的な外交を積極的に行い、国に多大な利益をもたらしている。  だから健国際を機に近隣国の要人たちをパーティーに招き、次期公爵として顔を広める必要があるのだ。  どんな危険を冒してでも達成しなければならない使命なのだとデイビットが教えてくれた。  責任感の強いクラストのことだから絶対に失敗はできないと気負っていても無理はない。  クラストが相手をしているのは世界である。  「オレとは全然不釣り合いだ」  そもそも出自が違う。自分とどうこうなると考える方がおこがましいだろう。  ロキは寝返りを打ち、痛む胸を堪えるためにクッションをぎゅっと抱きしめた。  「こんなところにいた!」  突然扉が開き、ロキと同じ給仕の恰好をした男が入ってきた。男はずかずかと部屋に入り、ロキの腕を掴んだ。  「早く持ち場に戻れ! 休憩にいつまでかかっている!」  「あ、あの……」  「いいから急げ!」  男はロキを他の給仕と間違えているようだったが、ずっと部屋に閉じこもっていたので飽き飽きしていた。  いけないことだとわかっている。でも外に出られるチャンスに期待で胸が弾む。  (貴族が行うパーティーをこの目で見てみたい)  男に連れて来られたのは来賓が多くいる大広間だ。  宝石のようなシャンデリアが吊り下がり、テーブルには見たこともない料理が並んでいる。  客人たちに目を向けて驚いた。  白い肌もいれば、褐色肌もいる。髪の色も様々で赤や水色、珍しいピンク色もいた。ロキと同じ黒髪もちらほらいる。東の国の者なのだろうか。  あちこちで異国の言葉が飛び交っていて、世界を凝縮したようだ。  男はロキにそっと耳打ちをした。  「仕事は覚えているな? 空いたグラスを受け取って裏に片付ける。なにかわからないことがあったら俺に訊くんだぞ。勝手な行動はするな」  「はい」  「よし、行け」  男に背中を押され、ロキはパーティー会場に足を踏み入れた。  壁越しで聞いていたよりも音楽は壮大に響き、中央ではダンスを踊っている。だがほとんどの客人はグラス片手に談笑をしていて、そここで笑い声が聞こえてくる。  ロキは首をぐるりと回しクラストを探した。  (……いた!)  クラストは窓側に立ち、令嬢たちに囲まれている。赤やピンク、レモンイエローなど煌びやかなドレスを身にまとった令嬢がクラストに群がっていた。  彼は無表情で令嬢たちの話を聞き、相槌を打っている。  (やっぱクラスト様ってモテるんだな)  公爵家であり、美男子でもあるクラストは令嬢たちの注目の的だろう。婚約者の一人や二人いてもおかしくない。  でもあの令嬢たちはクラストと肉体関係はないはずだ。自分だけみんなが知らないクラストを知っているという優越感に浸り、ロキは会場を歩き回った。  「これを片付けてくれないか」  「かしこまりました」  ロキは紳士に呼び止められ、空いたグラスを受け取った。  紳士の一言を皮切りに次々と用事を任され、裏に戻ったりわからないことはさっきの男に聞いたりと忙しくなった。  (飯屋で働いていたときと似てて楽しい)  本来ずっと働いてきたので、こうして動いている方がしっくりくる。  ロキがテキパキと動き回るので、給仕の男は大いに褒めてくれた。  (オレってこういうのが向いてるんだろうな)  しみじみとしていると「おい」と呼び止められた。振り返ると眉間に皺を寄せたクラストが腕を組んでいる。周りに令嬢たちを引き連れているので、ロキは笑顔を貼りつけた。  「お酒のお代わりでしょうか?」  「なぜ、ここにいる?」  「人手が足りないと言われたので」   部屋から出るなとは言われたことを思い出し、さっと血の気が引いた。確かにあまり褒められた状況ではない。   そっとクラストの顔が近づいた。  「隙を見て部屋に戻れ。父たちに見られるわけにはいかない」  「……わかりました」  小さく頷くと鋭い視線を感じた。  ロキが目線を上げると金色の髪にアメジストの瞳が印象的な令嬢から睨みつけられていた。顔が恐ろしく小さく、手足が長い。真珠のように滑らかで白い肌だ。  他の令嬢たちとは別格の美しさがある。  令嬢は形のいい眉を跳ねさせた。  「クラスト様、そちらの給仕とはお知り合いなのでしょうか?」  鈴が鳴るような声に隠れた棘がある。ロキの立場が下だと見て、小馬鹿にしているのがすぐわかった。  むっと唇を尖らせたが相手は令嬢だ。ロキの立場で言い返せるわけがない。  クラストは首を横に振った。  「いや、ただ酒を頼んだだけだ」  「ですが親密に見えてましてよ。レビーナ公爵家令息ともあろう方が下衆な男に懸想するなんて、あってはならないことですものね」  「シンシア、言葉が過ぎるぞ」  「申し訳ありません、旦那様」  シンシアは小さくお辞儀をした。いま旦那様と言ったのだろうか。  ロキが瞬きもせずにみつめているとシンシアは片頬を吊り上げている。  「旦那と呼ぶなと言っているだろう」  「ですが婚約はしているではありませんか。同じことですわ」  「それは親が決めたことだ。俺は認めていない」  「この場でわたくしに恥をかかせるおつもりですの?」  取り巻きらしい令嬢たちが大袈裟に溜息をこぼし、めそめそと泣き始めるシンシアの肩を撫でている。  シンシアたちの声は大広間の隅々までよく通り、他の来客からの視線が刺さった。  ここは他国の要人も来ている。下手なことはできないのだろう。  クラストは堪えるようにぐっと唇を噛んだ。  だがみるみると顔色が青ざめていく。  「ぐっ……」  クラストは頭を抱えた。薄っすらと右頬に紋章が浮かんでいる。  最悪のタイミングで呪いが発動してしまったらしい。  「クラスト様!」  ロキが手を差し出そうとするとシンシアに叩かれた。やはり嘘泣きだったようでアメジストの瞳はまったく濡れていない。  それよりもロキは驚くものを見て、声がでなかった。  (シンシア様の頰にもライラックの紋章が!)  呪いの紋章は呪いを受けた者とかけた者二人に表れる。つまりシンシアはクラストに呪いをかけたということだ。 きっと呪いが発動したから彼女にも表れたのだろう。  ロキの少ない知識でもすぐに察した。  シンシアはクラストを愛している。彼は婚約自体を認めていない様子だったので、既成事実を作り結婚を強引に進めようとしているのではないか。  なら発情の呪いをかけるのも頷ける。  ロキはぐっと奥歯を噛んだ。  呪いのせいでクラストは郊外の屋敷にこもり、抱きたくもない男で発散させられている。自分の気持ちを蔑ろにされて喜ぶ者なんていない。  でもこれでやっと犯人がわかった。  呪符は常に身体に身に着けなればならない。きっとシンシアのドレスの中に仕込んでいるのだろう。  (いまが正体を暴くチャンスだ。でもクラスト様を放っておくことなんてできない)  シンシアはドレスの裾がつくのも気にせず、しゃがみこんだクラストを支えるように膝をついた。  「あぁ……クラスト様。まだお身体の調子がよくないのですね。それなのにご無理なさって」  白々しい演技だ。だがここでロキが糾弾するわけにもいかない。  こぶしを握り、ロキはシンシアから奪うようにクラストの肩を抱いた。  「ではお部屋にお連れします」  「いいえ、妻であるわたくしがやります」  「シンシア様にお手を煩わせるわけにはいきません。ここは使用人であるオレが」  汗がじとりと背中を伝う。ここでシンシアに任せたらダメだ、と警鐘が頭の中で鳴り響いている。  騒ぎが広がってしまい、人だかりができた。クラストの息はどんどんあがっていき我慢の限界がすぐそこまで迫っている。早く楽にしてやりたい。  でも、どうすればいいんだ。  「何事ですか?」  切れ味のよい刃物のような声に顔を上げると深紅のドレスを身にまとった老齢の淑女が立っている。グレーの髪は品よくまとめられ、ドレスと同じ色の口紅が特徴的だ。  顔は笑っているのに逆らえないオーラがある。  「レビーナ夫人……」  シンシアがこぼした声にはっとする。クラストの母親ということか。  隣にいる男性は小さな咳を繰り返している。身なりからしてクラストの父なのだろう。  レビーナ夫人はゆっくりと周りを見渡し、最後にロキに視線を定めた。  「そこの給仕、クラストを部屋に連れて行きなさい」  「それはわたくしが……っ!」  「心配してくださってありがとう、シンシア。クラストの体調が悪くなったみたい。少し休めばよくなるわ」  レビーナ夫人に窘められたシンシアはおろしたこぶしを握った。さすがに分が悪いと踏んだのだろう。  ロキはクラストの身体を支え、半ば引き摺るようにして大広間を出た。廊下には騒ぎを聞きつけたらしいデイビットもいたので、二人で二階にあるクラストの自室まで運ぶ。  ベッドに寝かせ、タイやシャツのボタンを取って呼吸を楽にさせてあげた。  クラストはびっしょりを汗をかいている。体温も熱い。呼吸が荒くなっていき、下半身は兆していた。  ロキも迷わず自分のシャツを脱ごうとするとクラストに腕を掴まれてしまった。  「やめろ……と言っただろ」  「オレはそのためにいるんです」  いまさらなにを迷うことなんてあるのか。クラストの手を払いのけようとしたが、恐ろしいほどの力で振りほどけない。  発情して辛いはずなのにどこからそんな力が出ているのだろうか。  「もう嫌なんだ……こんなこと、したくない」  痛みを伴った本音にロキの胸は締めつけられた。やはりずっと我慢してきたのだろう。  でも自分じゃどうしようもできなくて、我慢して、我慢して、我慢して。とうとう限界がきてしまったのだ。  「クラスト様」  「出て行ってくれ」  「でも!」  「出て行け!」  腕を引っ張られ、廊下に投げ飛ばされた。がしゃんと鍵をかけられてしまい、廊下で控えていたデイビットが慌てて駆け寄ってきてくれる。  「どうされたんですか?」  「クラスト様が……出て行けと」  「そんな」  デイビットも驚いている。いままでこんなことは一度もなかった。  (もしかしてシンシア様がいるから?)  彼女の手前、ロキを抱くことに抵抗があったのかもしれない。  バラバラになっていた現実が一本の糸に繋がったように腑に落ちた。  (オレはクラスト様の慰めにもなっていなかったんだ)  熱いものが込み上げてきてロキの頰を伝った。涙が次々と溢れ、止めることができない。  扉の向こうではクラストの苦しそうな呻き声が聞こえる。  それが耳に届くだけで心臓が張り裂けてしまいそうだ。  (……クラスト様を一人にしたくない)  クラストへの想いが一筋の涙となってあらわれる。  このまま指を咥えて待っているのか。  ロキはぱんと両頬を叩いた。  クラストの心がシンシアにあろうと関係ない。いま、ロキがやるべきことは一つだ。  ロキはも一度頰を叩いて、気合いを入れた。  「デイビット様、離れてください!」  「なにをなさるのですか!?」  「修理費はオレの給金から引いてくださいね」  ロキは助走をつけて扉を蹴破った。でも一度だけじゃびくともしない。何度も蹴りつけると重厚な扉がバキバキと音を立ててあっけなく割れた。  破片を蹴り飛ばして中に入ると部屋のすみで縮こまっていたクラストは目を丸くしている。  「さぁすべこべ言わずにヤりますよ!」  ロキはクラストの腕を取り、廊下に出た。デイビットに空いている部屋はないかと訊き、隣の部屋を使わせてもらう。  客間なのか調度品の類もあり、天蓋のついたベッドが月明かりに照らされている。  ロキはそこにクラストを投げ飛ばし、上に覆い被さった。  「オレに対して罪悪感があるなら最後まで相手してください! クラスト様が発情するとオレまで疼くようになってしまったんですよ!!」  困り眉のクラストは口元を手の甲で覆った。  「おまえは、なんてことを」  「気にされなくていいのです。オレも十分楽しませてもらってますから」  「ははっ、そうか」  「だからね……しますよ! もう!!」  ロキがシャツに手をかけるとやんわりと制された。また止めようとしているのか、と睨みつけるとあっさりと体勢を入れ替えさせられる。  クラストに覆いかぶさられロキは目を回した。  「おまえはどうして斜め上からくるんだろうな」  「どういう意味ですか?」  「俺の思い通りにならないってことだよ」  顔が近づいてきてキスをされた。初めて触れた唇はすぐに離れてしまう。甘さだけが口に残り、ロキはクラストのシャツを引っ張った。  意図を察したクラストがもう一度近づいてくれる。  角度を変えながらどんどん口づけが深くなっていく。舌を差し込まれ、ロキは拙いながらも舌を絡ませた。  飲みきれなかった唾液がロキの顎を伝う。  「むぅ……はっ、息できない」  やっと解放されて息を吸うとクラストの唇が首筋からどんどん下へ降りていく。  シャツを捲くられ赤い突起を口に含まれるとビリっとした刺激に身悶えする。  「んんっ、オレはいいから……クラスト様を」  「ロキの声を聞くだけで堪らないよ」  そう言いながらも器用に残りのボタンを外され、シャツを床に放った。  腕を引っ張られ起き上がらされるとクラストが赤子のように乳首に吸いついている。視線を下げると彼の男根がスラックス越しでもくっきりと形になっていた。  「クラスト様……こっち来て」  「ん? こうか?」  正座をしたロキの膝の上でクラストに横になってもらう。  見下ろすとクラストは熱心に乳首に吸いついている。長い睫毛がロキの肌に触れくすぐったい。  ロキはクラストのスラックスを寛げて張り詰めた性器を取り出した。一度も触れていないのに亀頭から愛液が滴っている。  「こうすれば……一緒に……はぁっ」  クラストの男根を上下に扱きながら乳首を吸われると背徳感がぞくぞくと背中を駆け上がる。授乳をしているような錯覚になり、美味しそうに乳首を吸うクラストの髪を撫でた。  「気持ちいいですか?」  「んっ……」  ロキの問いも聞こえないようでクラストは夢中で乳首に吸いついている。反対側は指で挟まれ、こりこりと弄られると二つの違った快楽に翻弄されてしまう。  射精感が膨れ上がってきた。それはクラストも同じようで、愛液の量が増えて茂みを濡らしている。  「クラスト様っ……もう、んんっ」  悲鳴のような嬌声を上げてロキは達した。背中を仰け反るとクラストも追いかけてきて、体重を支えきれずに後ろに倒れる。  その反動でクラストも達したようで手のひらに熱い飛沫がかかった。  「はぁ、はっ……あっ……」  焦点の定まらない視線を向けるとクラストはシャツを乱暴に脱ぎ捨て、ロキのスラックスを脱がせた。  獰猛な薔薇色の瞳にごくりと唾を飲み込む。  いまから食べられるというのにロキの身体は歓喜に震えている。クラストに快楽を教えられたせいだ。  「クラスト様……お願い、します……」  ロキは足を広げて、蕾を曝け出した。  クラストを誘うように腹に力を入れたり抜いたりをして、蕾が開閉する様子をまざまざと見せつける。  「はぁ……ロキ」  クラストは長い指を舐め、一気に二本を中に挿れた。与えられた刺激にロキの性器からびゅっと残滓が飛び出る。  「あぁっ! あっ、はっ……んん」  「……いつ触っても柔らかいな」  「だって、準備……ふっあ」  なにを今更、と見上げるとクラストは不機嫌そうに眉を寄せた。  「今度から俺にさせろ」  「クラスト様に手を煩わせるわけにはいきません」  「俺がしたいんだ」  「それはどういう……ああっ!」  言い終わる前に弱い箇所を押されてしまい、ロキは打ち上げられた魚のようにびくびくと跳ねた。  クラストは一息で指を抜くと自身をあてがい、躊躇なく奥まで突いた。  「はあぁっ! あっ、あぁ!」  腰を掴まれ奥まで穿たれる。それ以上入らないのにもっとと訴えるように突かれてしまう。  あまりの気持ちよさにロキは涙が溢れてきた。  「気持ちいいっ……だめ、そこっ……あっ、いい!」  「いいのにだめなのか」  「だめっ、またイく……イっちゃう、あぁ!」  がんと奥を突かれた拍子にロキは射精した。先程出したとは思えないほど精子が勢いよく飛び出し、クラストの鍛え上げられた腹筋にまでかかってしまう。  達した余韻に浸っている暇もなく、体勢を変えられ四つん這いにさせられた。  再び挿入され、さっきとは違った箇所を突かれる。新たな快楽の扉が開き、ロキは嬌声を上げるしかない。  後ろ手を掴まれ、体勢が不安定になる。ロキが頼れるのはクラストしかいない。必死に手を掴んで与えられる刺激を受け入れた。  「くっ、……出すぞ」  「はっはぁ……っ、いい、奥、奥出してっ!」  ばちゅんと最奥を穿たれ、中に熱いものが注がれる。  力なく倒れるとようやく手を離してもらい、尻を高く上げた体勢にされる。  小刻みに痙攣している身体は悦楽に溺れていた。余韻に浸っていると再び律動が始まる。  ふと社交ダンスの曲が聞こえてきた。  まだ屋敷には大勢の来客やシンシアたちがいるはずだ。国に関わる大切な話をしているに違いない。  でもロキとクラストは裸になって獣のようにお互いを求めている。  いけないことをしているという罪悪感が新たな快楽の火種になる。  「まだへばるなよ」  「……はい」  ロキが腰をぎこちなく揺らすと律動が再開された。

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