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第9話
家に帰ってきてからも日向は俺と少し距離を取っていた。あんまり気にしてなかったけど、俺が動くたびに体をビクッと震わせられると少し傷つくし、俺だって気を使うし、面倒くさい。
「ねえ、何もしないって言ったじゃん」
「あ···ごめん」
「怖いならもう出て行くよ?」
「怖くない!!」
急に大声を出して迫ってくる。少し驚いて目を張ると俺の服を掴んで「違う違う」って何度も繰り返す、ああ、なんか病んじゃってる?
「わかったわかった、じゃあもっと側にいてよ」
「うっ···あの、キスも、しちゃダメだからね···?」
「はいはい」
キスもダメなのかよ、そんなこと思ったけど俺たちは決して恋人同士ではないってことを思い出してこくこく頷いた。
すぐ側、っていうか俺の開いた足の間に入ってきて俺に背中を見せてくる日向。いや、側にって言ったけど、そんな急にレベル上げなくていいんだよ。でもきっとすごい勇気を出してここに座ってると思うし、もうちょっと離れてって言ったらバカみたいに距離を取りそうだし。
「···可愛いね」
「っ、そ、そういうのも、無しだよっ」
振り返った日向の両手で口を覆われる。
モゴモゴ口を動かすけど言葉にならなくて諦めた。
「そういえば···架月じゃなくて、お兄さんの方···」
「んー···?」
口から手を離してくれないと何を聞かれても答えられないよ。って思いを込めて視線を送るとパッと手を離した日向。そのまま俺に疑問をぶつけた。
「お兄さんの方···太陽くん、だっけ···?」
「ああ、うん、太陽がどうかしたの?」
「えっと、架月って学校でも基本太陽くんと一緒にいたでしょ。だから、寂しくないのかなって、思っただけ···」
不安そうな目が俺を見るから「別に」って答えたけど、寂しくないわけはないよね、いつも隣にいた存在がいないんだから。
「って、そんなことはどうでもいいよ」
「···ごめん」
「怒ってないし謝らないでよ」
俺より細い体を抱きしめる。首に鼻を近づけてスンスンと吸うと甘い匂いがした。恥ずかしがって首を竦めた日向だけど気にせず首筋を舐める。
「っん」
「嫌?」
「嫌じゃ、ない、けどっ」
フッと口元だけで笑う、耳元に口を寄せてわざと吐息をかけるように小さく言葉を囁く。
「ねえ、本当にキスしちゃダメ···?」
耳たぶを甘く噛んで、舐める。
ビクビクと反応をする日向が可愛い。
「っぅ···だ、ダメじゃ、ない···っ」
震える声でそう言った日向に勢いよく口付けた。
舌を絡ませると日向はうっとりとして体から力が抜けたのか俺の方に倒れてくる。抱きとめて長くキスを繰り返していたら息が上手くできないようで胸をトントンと叩いてきた。
「ん、はっ···」
目元を涙で濡らしてる日向に背中がゾクゾクとして押し倒したくなる。その気持ちを何とか消そうと日向から目をそらして「はぁ···」と息を吐いた。
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