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第15話
両サイドに緑色のフェンスのある人通りの少ない道。
そこの道の隅っこに白と黄色の小さな花が咲いてる。それを横目でチラリと見た。
もう夕方だ、空が赤く染まってきてる。
ボーッとしながらその道を歩いてるとフラフラとした黒髪の男がこっちに向かって歩いてきていた。
ぶつからないように道の端っこを歩いてその男の隣を過ぎる。ひどく煙草の匂いがした。
そのまま気にせずまっすぐ歩いていたから、俺は気づかなかった。
その男が俺を振り返って目を見開いているのを。
***
「たーだいまー」
「架月ッ!!」
「っ!い、った···」
玄関で思いっきり抱きついてきた日向のせいでドアに後頭部をぶつけた。痛みに顔を歪めるけど日向はそれに気付かないのか俺に抱きついたまま離さないで「どこ行ってたの···!」とか「遅いよっ!」とか、文句を投げてくる。
「ねえ、頭打ったんだけど」
「あ···ごめん、なさい」
「自分のことばっかり」
「ごめんなさい···」
俺だって自分のことばっかりだ。人には言えない。それでも他人がそういう行動を取っていると腹は立つ。
「···ご飯もいらないから、俺風呂入るね」
「えっ···食べて、きたの···?」
「違うけど、腹減ってないし、今日はいい」
風呂場に行こうとすると後ろからドンと抱きつかれて、またかよ···と振り返ると涙を溜めて震える声で何度も何度も謝ってくる。
「ごめ、なさいっ、ごめん、ごめ···っ」
「···ちょっと、落ち着いて」
涙も、鼻水も出して、ちょっと汚い。
ティッシュを渡すとごめんごめんって言いながら鼻をかんで涙を拭いた。
「嫌いに、ならないでっ」
「わかったから、ほら、落ち着いて」
抱きしめてキスをする。最初こそ小さく抵抗していたけど気持ちよくなったのか、落ち着いたのか、動きを止めて俺に体重をかけ凭れてくる。
「落ち着いた?」
「···う、ん」
「よかった。ごめんね、俺も態度悪かったよ」
背中をポンポン撫でて泣き疲れたのか寝そうになってる日向に「寝ていいからね」って言うと小さく頷いて返事をし、フラフラとベッドに移動した日向はすぐに目を閉じた。
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