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第19話
「あ、た、太陽···?」
「おう。お前ずっと電源切ってたろ。何度も連絡したのによぉ」
「···ごめん。ねえ、今どこにいるの···?」
「朧っていう男の家」
男のところ?朧?そいつ誰?
不安になって気付けば「今すぐ会いたい」って叫んでた。周りが俺を見る視線は気にせずにそう言うと「わかった」って場所と時間を指定される。その時間はもうすぐやってくる。だから買い物なんて忘れて一目散に走った。
指定された場所、そこにあるパイプの柵に金髪が腰掛けていた。
「太陽ッ!」
「あ?···おー、架月!元気だったか!」
思わず太陽に抱きつく。ああ、会えたのはすごく嬉しいのに、なぜだか不安は広がる。
「ねえ!その朧ってやつに騙されてたりしないよね!?」
「はぁ?何だよ突然。どうしたんだ?」
「なんか、ほら、そいつがもしかしたら何か怪しいスカウトのやつとか···」
「ばーか、もしそうだったらとっくに逃げてるよ」
ポンポン、と背中を撫でる温かい手。
いつも隣に太陽がいたのに今はいない。その代わり日向がいて、日向の手はこんなに温かくない。
「太陽···」
「今はお前とあの家に帰るつもりはない。···まあ、いつでも会えるし、だから連絡はしてこいよ」
「え···」
一緒に帰らない?って聞こうとしたらそれより先にそう言われて言葉が出てこなくなる。
「お前は今何してんだ?」
首を小さく傾げた太陽に今の状況を話すと眉を寄せて「お前俺の心配してるけど、自分の心配をしろよ」って怒られた。
「何で?」
「その、日向の言葉を聞いてるとお前に依存してるとしか思えない。お前がもし家を出て行くってなったら変な気を起こすかも知んねえし···」
「もしそうなっても、日向じゃ俺に勝てないよ」
フッと笑うと太陽も口元を緩ませて俺の頭をポンポンと撫でた。
「今日はもう帰るな。朧が早く帰って来いって言ってたから」
「え···あ、わかった···」
「何かあったらいつでも、言えよ」
ニカって笑った太陽、いつも通りの笑顔。
それにつられるように俺も口元が緩んだ。
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