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第21話
数日前、朧が仕事に行って、帰ってきた時の話だ。
やたらとワクワクした顔をしていて仕事で嬉しいことがあったのだろうか。
「今日お前にそっくりなやつ見たぞ」
「俺にそっくり···?」
また元恋人の話だろうか?と思えば今回は違うようだ。
「まじドッペルゲンガーかと思った!!」
「···もしかしてそいつ銀髪?」
「おう、そうだ!···え、何で知ってんの?」
もしかして···っていうか9割の確率で架月だな。
あいつもここら辺に住んでんのか···?
「何処で会った?」
「お前と初めて会った場所」
じゃあ別にここら辺ってわけじゃねえんだ。
少しだけ肩を落として、それから架月はどんな様子をしていたのかを聞いてみる。
「様子?···あー、なんかフラフラしてて危ない感じだったかな」
「怪我とかしてなかったか?それか返り血みたいなの飛んでたりとか···」
「そこまでは見てねえけどさ、何お前、あいつの知り合い?」
朧がキョトンとした顔で聞いてくる。
それに頷いて「双子の弟」だと言うと「おお!俺生で双子見たの初めてだ!」ってどうでもいい言葉が返ってきた。
「架月って言うんだけど···あいつ色々あって喧嘩ばっかりしててさ、親と衝突して家出ちまって···1回連絡きたんだけどそれ以来何もないし···」
「心配なんだな。さすが兄貴」
「あいつとは生まれた時から一緒だから」
不安になるんだ、隣にいた存在がいなくなるとどうしても。
「まあ危ない感じはあったけど、そこまで心配しなくても大丈夫だと思うぞ」
「何で」
「俺の勘。ていうかさすがにやばかったらお前に連絡してくるだろ」
酒と煙草臭い服を着たまま抱きついてきた朧、眉を寄せるとケラケラ笑って「風呂入ってきまーす」って陽気に言って風呂に向かった。
小さく息を吐いてさっきまで寝ていたベッドを背もたれに床に座る。
無意味に携帯を触って、俺とは全く違う笑い方をする架月のあの笑顔を思い出して拳をグッと握った。
「架月···」
何も起こらないで無事でいてくれたら、もうそれだけでいいから。と心の中で呟いた。
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