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第22話
それから数日経ったある日の午後三時頃。
朧に抱きしめられながらテレビを見てると携帯が鳴った。
画面を見てみると架月からの着信で慌てて出ようとしたけどここは平然を取り繕うと思い「はーい」と電話に出た。
「あ、た、太陽···?」
不安そうな揺れてる架月の声。
今は1人でいるやか、俺の前だけで見せる弱い声だ。
「あ、た、太陽···?」
「おう。お前ずっと電源切ってたろ。何度も連絡したのによぉ」
「···ごめん。ねえ、今どこにいるの···?」
「朧っていう男の家」
そう言った途端、架月は「今すぐ会いたい」って叫んできてすぐに「わかった」と返事をして時間と場所を指定した。
電話を切って用意をしようとすると朧に腕を掴まれる。
「何処行くんだよ」
「弟に会ってくる」
「···すぐ帰って来いよ」
「朧が仕事に行く時間までには帰ってくる」
手が離れて玄関に向かい指定した場所まで走った。
目的地について辺りを見渡すけど架月の姿はなかった。パイプの柵に腰掛けて早く来ねえかなぁって待ってると「太陽ッ!」と名前を呼ばれ強い力で抱きしめられる。
「あ?···おー、架月!元気だったか!」
銀色の髪の間に指を差し入れ頭を撫でると架月は顔を上げてすごい勢いで話し出した。
「ねえ!その朧ってやつに騙されてたりしないよね!?」
「はぁ?何だよ突然、どうしたんだ?」
意味不明なことを言う架月の背中をポンポンと撫でて落ち着かせる。少しずつ勢いがなくなって俺に凭れて、ゆっくり言葉を落としていった。
「なんか、ほら、そいつがもしかしたら何か怪しいスカウトのやつとか···」
「ばーか、もしそうだったらとっくに逃げてるよ」
涙目になってる架月、その目を見てわかった、架月は後悔してるんだ。きっと自分が家を出たことで俺に何かしらの害があって、それで俺も家を出たって思ってるんだ。
あながち間違いじゃないけど、最大の理由はあの家にお前がいなかったからだ。
だから決して架月のせいじゃないし、今、例え架月に一緒に帰ろうと言われても帰るつもりはない。だって朧に帰るって約束したから。
「太陽···」
「今はお前とあの家に帰るつもりはない。···まあ、いつでも会えるし、だから連絡はしてこいよ」
「え···」
何も言わなくなった架月に今度は俺から質問した。
「お前は今何してんだ?」
素直に今の状況を話してくれた架月、けどどう考えても俺より架月の方が心配で。
「お前俺の心配してるけど、自分の心配をしろよ」って怒ると「何で?」ってキョトンとした顔が返された。
「その、日向の言葉を聞いてるとお前に依存してるとしか思えない、お前がもし家を出て行くってなったら変な気を起こすかも知んねえし···」
「もしそうなっても、日向じゃ俺に勝てないよ」
架月がフッと笑うから俺も口元を緩ませて架月頭をポンポンと撫でた。
「今日はもう帰るな。朧が早く帰って来いって言ってたから」
「え···あ、わかった···」
「何かあったらいつでも、言えよ」
ニカって笑って、いつも通りの笑顔を見せる。
そしたら架月もつられるように小さく笑った。
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