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第26話

その場にしゃがみこんで頭を抱える。 俺たちじゃ到底敵わない相手だ、真守はきっとそんな相手に愛されてる。 「じゃあ···何で兄貴と···?」 喧嘩したって事は知ってた。だから兄貴のところに逃げた事も。 それで俺たちの前に燈人ってやつが現れて、そのまま真守を連れ去った。 「その燈人ってやつを、兄貴は慕ってた···」 という事は燈人は兄貴の上司? 兄貴の上司が真守の彼氏? 考えるより聞いたほうが早いと思って兄貴に電話をかける。少しして「はい」と電話に出た兄貴。 「何だ」 「燈人って誰」 「···その人の名前を呼び捨てにするな」 「だから、誰だって聞いてんだよ!!」 怒鳴ると兄貴は「うるせえな」って少し怒って、それから「どうしたんだ、お前がそんなに怒鳴るなんて」って言ってきた。質問をしてるのは俺なのに、ちゃんと話を聞いてくれ。 「誰···」 「俺の上司だ」 「···ねえ、あのさ、兄貴が何の仕事をしてるか俺は知らないよ。けど、真守はヤクザだって知ってる。その真守と親しげだったってことは、兄貴もヤクザだっていう可能性が大きいって思ったんだ。」 「で、何だ。」 「真守は浅羽組と桜樹組の2つの組に所属してるって言ってた。でも、そんな世界で2つの組に所属する事なんてよっぽどの事じゃないとできないと思う。だから···その燈人ってやつは、兄貴の上司で···組のトップにいるやつじゃないのか」 そう言うと電話先で兄貴は黙った。 図星だったのか?それともあまりにも間違っていた? 「···それを知って、お前はどうするつもりなんだ」 「っ、それは···」 何も考えてなかった。そうだ、それを知ったところで何が変わるんだ。虚しくなって手で口を覆い声を押し殺して泣いた。 「架月」 「···兄貴も、真守も、大嫌いだ」 「·········架月」 「もう、全部無くなればいい」 体から力が抜けて、携帯が手から落ちる。その拍子に通話は切れて、携帯を取りポケットに突っ込む。 「こんな風に、なるなんてなぁ···」 悲しくなって堪らなくて、この事実を太陽に伝えたかったけど、そうしたら太陽まで苦しめてしまうんじゃないかって思って、伝えない事に決め、目を閉じる。 「帰らないと···」 帰る場所なんて無いけれど。 立ち上がってここより明るい道を目指す。 俺と、太陽がこの苦しみから解放されて、幸せな道を進めるようにって、何度も何度も祈りながら。

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