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第31話
「···なぁ」
「ん?」
自分の口から出る掠れた声。
話すのに少し喉が痛いけど仕方ない。
「教えてくんねえの?」
「···言うよ」
俺の体を背中側から抱きしめた朧は、そのまま頸にかぶっと軽く噛み付いた。
「俺、孤児院で育ったんだよ」
「···うん」
抱きしめる力が強くなって少し痛い。でもその時のことを思い出してるんだと思うと何も言えない。
「俺こんなんだからうまく馴染めなくてな、そこでいじめられてた。」
「············」
「でもな、こんな俺だから、通ってた学校ではまあ、常に1番だったわけだよ」
「···喧嘩してたのか?」
「まあ、喧嘩もしてたし、俺頭いいし」
「嘘だろ!?」
「どういう意味だよ!?」
振り返るとケラケラ笑う朧がいて、その記憶は苦しくないんだと知って俺もクスクス笑う。
「まあ、いじめられてたから孤児院でも誰かと遊ぶわけじゃねえし、勉強する時間だけはあったんだよ」
「それって楽しくねえな」
「ああ、全くな!楽しくねえぞ!オススメしない」
一頻り笑って落ち着いたところで話はまた始まる。
今度はさっきみたいな顔じゃなくて、苦虫を噛んだみたいな、そんな顔になった。
「そんな俺のことをさ、ずっと気にかけてくれるやつがいて···孤児院の先生なんだけど、男の···名前は忘れちまった」
「その人が好きになったとか?」
「残念。その頃の俺は恋とか興味なかった」
フッと笑ってまた力強く俺を抱きしめる。
「高校の時、すげぇはしゃいでたんだよ。いじめてきてた奴らも流石にもうそんな俺をいじめようとはしなかった。俺に近づくことも怖がってたんだぜ?」
ざまあみろって感じだろ?
そう言った時の顔は悲しそうで、ああ、すごく寂しかったんだろうなって痛い程わかった。
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