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第34話

「なあなあ、買い物行こう」 「何買いに行くんだよ」 「チョコレート」 「甘いの好きだっけ?」 「いや、チョコだけ食べれる」 煙草に火をつけながらそう言った朧は窓から顔を出してふぅと息を吐く。 「帰りにコンビニで買ってこればよかったのに」 「今欲しくなった」 「ふーん。わかった、後で行こう」 「行く!」 吸い始めたばかりの煙草を灰皿に押し付けて俺の手をパシリと取った。 「早く行こう、チョコ食いてえ!」 「え、あとでって言っただろ···寝起きだから今は嫌だ」 「太陽は?何食べる?」 「全然話聞かねえじゃん。···俺もチョコ食べる」 そんなどうでもいい、ただの日常を俺が過ごしている間に、架月が苦しんでいたことを、俺はまだ知らなかった。

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