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第35話 架月side

「架月···架月···」 「痛い」 「架月、好き···好きだよ···」 あの日、真守に会った日から、俺も日向も少し変わった。 俺の側にずっといて離れない日向。少しでも離れようものなら抱きついてきてその日1日はもう離れなくなる。 「さっき言ったじゃん、ちょっとコンビニ行ってくるって」 「僕も行くって言ったのに、置いていった」 「行くって言いながら用意何もしなかっただろ。···もう、泣かないでよ」 俺の肩に顔を埋めて泣き出した日向。面倒くさい。真守は絶対こんなことなかったから。だからあの日、真守を忘れようとしたけど、真守を日向に重ねようとしたけどそれができなくて、嫌になるくらい心の中が真っ黒になってきてるのがわかる。 「どこにも、行かないで」 「わかったから落ち着いて」 「わかってないよ!!」 ガブッと歯を立てて俺の肩に噛み付いた日向のおかげで痛みと一緒に血が滲む。それを手を強く握ることで気を紛らせた。 「架月は、全然、わかってないっ!!」 「じゃあ何を理解しろっていうのさ。日向のこと全部を?そんなの無理、できないよ」 「酷いよ···っ!」 「じゃあ日向は俺のこと、全部理解できるんだね?」 「できるよ!!」 その瞬間スーッ、と気持ちが冷めていって、日向を無理矢理自分から離して立ち上がる。 「じゃあ俺がこれから出て行くってことも理解しなよ」 「い、やだ···やだ!やだやだ!!行かないでっ」 玄関まで歩く俺を追いかけてきて、足元で泣きながら縋るように行かないでくれと何度も言ってくる。その姿が面白く思えて、フッと笑い同じ目線になるようにしゃがみこんだ。 「だって、俺のこと全部理解できるんでしょう?なら、俺が出て行く行動も、なんでそういう行動に至ったのかも、全部わかってくれるんだよね」 放心してる日向を放って玄関を出る。この後、日向が何をどうするのかは知らない。それを決めるのは俺でもこの世界でも無いわけだから、日向が考えて起こした行動を遠くから見ててあげよう。 まあ、崩れ落ちたら最高に面白そうだけど。と思いながら誰もいない暗くなった道を歩いた。

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