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第37話
パッと目を開けると見たことない天井があった。
起き上がると首がズキズキと痛くてそこを押さえた。
「起きたか」
「っ!」
声がした方を見ると兄貴がいて、すぐに近づき胸倉を掴んだ。
「そこら辺のやつには喧嘩で勝てたかもしれねえけど、俺には勝てねえぞ、クソガキ」
「うるせえクソ兄貴!!」
掴みかかって押し倒す。俺はもうどうしたらいいのかわからなくなって兄貴の上で溢れてくる涙を流した。
「何で泣いてるんだよ」
「わかんねえよ···、もうどうしたらいいんだ···、······助けて···」
兄貴の胸に額をつけてそう言う。ポンポンと頭を撫でられてその心地よさに甘えた。
「助けてやりたいのは山々だけど···とりあえず落ち着けよ。お前が今どうしてるのかとかわかんねえし。···太陽は?」
「太陽は一緒にいない···今は朧っていう男のところにいる」
「お前は?」
「日向って奴のところにいたけど、出てきた。」
兄貴の上から降りて流れた涙をグイッと雑に拭う。
「家には帰らねえのか?」
「···今更帰りたくない」
「俺のところ来るか?」
「嫌だ。真守に会う可能性が少しでもあるところには行きたくない。」
「なら、ここにいるのはよくないな」
兄貴が俺を担ぎ上げた。兄貴の肩に腹が当たって不安定な体勢に驚いて兄貴にしがみつく。
「どこ、行くんだ、よっ!」
「ここは桜樹組だからな、赤石は若に言われてここに来たりする。俺の家はここよりはあいつに会わなくて済むから取り敢えずは俺の家」
「降ろして!マジで嫌だ、こんなの嫌だ恥ずかしい」
「わかった。降ろしてやる。けど逃げるなよ」
それにわかったと返事してトン、と冷たい地面に足をつけた。
「ちょっとついてこい」
「何···?」
「荷物取りに行きてえし、今日はもう帰るからな」
「仕事は?」
「今日は終わり」
兄貴について行って1つの部屋に入る。そこには兄貴の他に3人の人がいて俺を見て眉を寄せた。
「おい、誰だそいつ」
「俺の弟」
「何でここにいるんだよ」
じーっと3人の視線が俺に集まってそれが不快で顔をそらした。
「すげえ綺麗な顔してんのな、お前の弟。···あ、お前もそうだったか」
「うるせえな」
「名前は?銀髪くん」
聞かれて、何て答えようか悩んで兄貴の後ろにサッと隠れる。そんな俺を兄貴はハイハイと言ってポンポンと頭を撫でた。
「架月だ」
「へぇ。まあ確かに、太陽って感じじゃねえな」
そう言われた途端胸が苦しくなった。ニタニタ笑っている男を睨みつけると片手をひらひらと振ってくる。
「架月くぅーん、何かあったらお兄さんに相談しなさいよ」
「誰がお前なんかに···」
「お前じゃない、俺は今井 錦(イマイニシキ)様だ」
胸を張ってそう言う今井錦を無視して兄貴に「早く」と文句を言う。
「俺たち帰るから。佐助、寝るなよ」
「ん」
「帰んのかよ!俺ともっと話しようぜ架月くんよぉ」
今井錦の言葉は無視して部屋から出て行く兄貴を追った。
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