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第39話
酷い頭痛で目を覚ました。見たことある天井。「ああ、兄貴の家か」って昨日のことを思い出そうとするけど兄貴と買い物して、帰ってきてからのことは何にも思い出せない。
水飲みに行こう。って寝ていたベッドを降りてキッチンに向かう。そこに行くまでに通るリビングで兄貴がコーヒーを飲んでいて、俺の姿を見て眉を寄せた。
「頭痛いのか」
「うん」
「水入れてやるから座ってろ」
そう言われてソファーに座るとすぐに目の前に水が出されてそれをゴクゴク飲んだ。
「俺、昨日、変なこと言ってた?記憶ないんだけど」
「別に」
「よかった。ねえ今日は仕事ないの?」
「休みにしてもらった。」
「ふーん···」
ソファーにごろりと横になる。
テレビをつけていないから無音で静かな空間。兄貴がコーヒーを飲む音と新聞をめくる音がやけに大きく聞こえる。
「架月、ちょっと来い」
「何」
「いいから、ここ座れ」
朝から何の話だ。長話になるのだけは避けたいなって真面目な態度で兄貴の前に座った。
「これからどこ行くつもりだ」
「···どこ、行こうかな。今から探すよ」
「なら、ここには誰も来させない。だからここに居ないか?」
「でも···」
渋ってると兄貴が俺に手を伸ばしてくる。
頭を抱え込まれて頬が兄貴の胸にあたる。兄貴の鼓動が聞こえてきて、それに安心してはぁ、と息を吐いた。
「───···昨日、お前、変なこと言ってたよ」
「···何て言ってた···?」
「······死にたいって」
それを聞いてフッと笑う。
そうなんだ、本心では、俺はそんなことを思っていたんだ。
「へえ、そんなこと言ってたんだ。ネタだね」
「泣きながら、言ってた。」
「···それで、心配してくれたんだ?」
兄貴の胸から顔を離して目を見つめる。
視線を逸らさないまま頷いた兄貴に抱きついた。
「じゃあ、俺が死なないように見張ってて」
「ああ」
「苦しくなったら、助けて」
「当たり前だ」
ポンポンと背中を撫でられるとそれに促されたように涙が出てきた。ああ、不安定だ。こんなに心が揺れてる。
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