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第46話
「え、日向?佐倉のこと?」
「佐倉日向って言うのか。」
「あいつの家ならわかるよ」
学校の校門付近で戯れてた同じクラスだった奴ら。俺を見た瞬間驚いてたけど日向の家を教えろっていうと快く教えてくれた。
「羽島くんたちが来なくなってから佐倉も来てないんだ」
「へぇ」
架月にベタベタくっついてたのか。そんな事ばっか考えているといつの間にか俺と話していた奴が怯えたような顔をしてる。
「は、羽島くん···?」
「悪い。それで、家どこ」
住所を教えてもらってそこに行く。
ついたのはアパートでそのうちの一部屋のインターホンを鳴らした。
「······はい」
少し待ってから出てきた日向。
酷く窶れていて驚いた。
俺の顔を見て目を見開き抱きついてきた日向はきっと俺を架月と間違えてるんだろう。
「俺は架月じゃねえぞ」
「か、づき···」
「離れろ」
「架月···架月っ」
一向に離れようとしない日向に手をあげそうになったがそれを堪えて日向の両肩を持ちグイっと前に押した。
「架月じゃねえ」
「え···?」
「架月の双子の兄の太陽だ」
「···た、太陽、くん···?」
「お前架月に何した」
胸倉を掴み引き寄せると怯えた顔になって「違う」を何度も繰り返す。
「架月が、俺のこと、理解してくれ、ないからっ」
「はぁ?」
「僕は、架月のこと、理解してるのにっ」
どこにそんな力があったのか俺の手を離させてドンっ、と押される。部屋に入ろうとしてる日向を逃がすかってドアに足を入れた。
「や、やめろよっ!!」
「話を聞け」
「嫌だっ」
しゃがみこんで耳をふさぐ日向。部屋に上がらせてもらうことにして日向を担ぎ上げ靴を脱いで中に入る。
床に腰を下ろして目の前に日向を座らせる。
「ひ、ひどいよっ!!」
「酷くても何でもいいけどよ、お前もう架月の事忘れろ」
「な、んで···?」
「架月はお前のところには戻ってこない」
はっきりそう言うと涙を流して俺の足に手を乗せる。
「何で···?僕、何か、した···?」
「知らねえ」
「だって、架月がしたいって言うから、エッチだってしたんだよ···?架月が隣にいてって、言うから、一緒にいたのにっ」
「···お前じゃなかったんだろうな」
「そんなの、自分勝手すぎるよっ!!」
怒って俺の胸をドンと叩く。
日向の気持ちもわかるけど、それより俺にとって大切なのは架月だから。
「忘れろ」
「そんなのっ、ひ、どい···っ」
泣き喚いて俺に縋り付く日向をどうしてやればいいのかわからなくて、とりあえず頭をポンポンと撫でた。
「太陽、くんは···架月に会ったの···?」
「会ってない。あいつは今俺も行けないところにいる」
俺は兄貴の家で、真守との思い出があるあの場所がトラウマだから。
「一回だけ、架月に会いたい···そしたら、忘れるからっ」
「···今は無理だ」
「いつでもいい。だから、それまでは覚えてるよ。ずっと」
深呼吸を繰り返して落ち着いたのかちょっとだけ笑顔を見せてくれた。
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