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第54話
息が苦しい、呼吸ができない。───···呼吸ができない!?
パッと目を開けると朧が俺をみてニヤニヤしてる。鼻を摘まれてたようでそりゃあ苦しいし息できねえよ!!
「殺す気か!!」
「んなわけねえだろ」
「くっさ、風呂入ってないだろ!」
「入ってなーい」
あまりの酒と煙草と、香水の臭さに顔を歪めるとケラケラ笑って「入ってきますよー」と着替えを持って風呂に行く。今日は一段と臭いが酷い。
朝飯···と時計を見ると午前4時。
おい、そんな時間によく鼻を摘んで起こそうとしたな···と思いながらも9時には寝ていたから寝不足になるわけでもないし早起きっていうことで。とトーストを焼く。
「ピーナッツ···」
この前買い物に行ったときに買ったピーナッツバターを塗ったトーストに齧り付いた。
「えー···何食ってんの」
「パン」
「俺は寝るぞ。お前寝ないの?まだ4時だけど」
「誰が起こしたんだよ」
「俺だな」
フッと笑う朧に違和感を感じる。
食べ終わったあとの皿を洗い場に置いて朧に近づき顔を両手で挟んだ。
「なんかあった?」
「何もない」
「その割にはなんか変だけど」
そう言った俺に「お前はすげえなぁ」って意味わかんない言葉を言って抱きしめてくる。
「···俺、そろそろこの仕事辞めようかなって。」
「うん、なんで?」
「ちょっと疲れたわ」
力なく笑った朧。ちょっとじゃなくて大分疲れてるみたい。両手で朧のまだ半分濡れた髪をワシャワシャと撫でる。
「うん。疲れたならやめて、ちょっと休んでまた新しいこと始めよう」
「うん」
俺の肩に額を乗せた朧は泣いてるようにも思えた。
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