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第55話 架月side
「海兄ちゃーん」
「なんでその呼び方に戻ってんだよ」
「何か兄貴よりそっちのが呼びやすいかもって思ってさ。嫌だった?」
「···別に」
近い距離にいる兄貴に手を伸ばす。
机を挟んで俺の手を掴んだ兄貴は何?って顔して首を傾げた。
「俺のこと好き?」
「ああ」
「······セックス、する?」
「お前がしたいならな」
そんなこと今は思ってない。手を離して立ち上がりググッと伸びをする俺を、怪訝そうな顔で見てくるから、俺も同じような顔をしてやった。
「何だよ」
「海兄ちゃんの真似してる」
「そんな顔してたか?」
「してたよ」
兄貴の隣に腰を下ろして肩に頭を乗せる。
じんわり伝わってくる熱にもっと触れたくて抱きつこうとしたけどダメダメ、我慢しないと。
「架月」
「何?」
「なんか、変な感じだな。こんな距離でこうしてんの」
「気持ち悪い?やっぱり真守の代わり、やめる?」
「やめねえ」
そう言って、俺に顔を寄せてキスをしてくる。
キスはもう慣れたけど···いや、うそ、慣れてない。今心臓が爆発しそうなくらいドキドキしてるもん。
「ぁ···っ、も、う···そういうのっ」
「うるさい」
兄貴から離れようと思ったら腕を取られてそのまま押し倒される。警告音が頭の中で鳴る。けど、抵抗しないのは別に嫌だとは感じてないから。
「このまま、するか?」
「······だ、め···」
「でもお前、顔がもう誘ってる風にしかみえねえぞ」
「···っ、バカじゃないのっ!大体ね!ヤるのには準備がいるんだよ!ケツ使うにはちゃんと洗わなきゃ···」
そう言ってる間に気付いた、これじゃあまるで準備をしてたらオッケーって言ってるようなものだ。顔が熱くなってきて、でも腕を取られてるから隠すことができない。
「顔真っ赤、準備してたらいつでもいいんだな?」
「···じ、準備···して、たらね···」
「ふぅん、なら今からしろ。代わりをする、しないをずっと繰り返すくらいなら潔く次に進んだ方がいいだろ」
「···それ、いいんだか悪いんだかわかんないよ」
「いいから、準備」
兄貴が上から退いて俺は体を起こす。
風呂場に行って「入ってこないでよ!!」と念を入れて言い中を洗った。
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