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第61話
「何でそんなにちゃんとしなきゃダメなんだよ。面倒くさい」
「俺の上司だから、頼むからちゃんとしてくれ」
「してますー!俺はいつでもちゃんとしてますぅ!」
兄貴と燈人さんに会いに行くまでの道中、車内でこういう時はこうしろとか色々言われてもういやだって耳を塞いだ。
「着いた」
「ん」
車から降りて1度来たことがあるそこを睨むように見る。
兄貴に腕を引かれてまるで何か悪いことして連れてこられたみたい。すれ違う組員さんたちが兄貴に頭を下げて行く。
「俺、兄貴のことなめてたかな」
「は?」
何言ってんだ?と首を傾げる兄貴に連れてこられた部屋。
兄貴がドアをノックをして「羽島です」って名前を言うと中からあいつの「入れ」って言う声が聞こえてきて逃げ出したくなった。
「失礼します。···お前もちゃんと挨拶しろよ」
「気が向いたらね」
中に入るとあの人がいてあからさまに顔を歪めてやった。
「弟の架月です」
「おう、座れ」
燈人···さんは椅子に座るように言うから遠慮せずにそこにどさっと座った。
「架月!」
「いいじゃん、座れって言ったしこの人」
「この人じゃねえだろ!」
怒る兄貴の言葉を耳を塞ぐことで無視して燈人さんを見るとケラケラ笑ってる。
「羽島、いい。悪いがこいつと話があるから出てってくんねえか?」
「俺、あんたと2人きりとか嫌なんだけど」
「うるせえな。···羽島、悪いが頼む」
兄貴は返事をして部屋の外に出て行く。変な空気が流れる部屋で俺をジーッとみてくる燈人さんに睨み返した。
「怖くねえのか?」
「怖がって欲しいの?」
「いや」
楽しそうに笑って俺に「あのな」と話し出した。
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