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第62話

「お前ら双子には悪いことしたなって思ってんだよ」 「···へえ」 「真守から聞いた。腹は立ったけどお前らをどうしようとかは思ってねえ。」 「何か凄く腹立つね。真守は俺のものだって言ってるのと同じじゃん」 「何か間違ってるか?」 ドヤ顔でそう言った燈人さんにイラついて舌打ちを零す。フッと小さく笑った燈人さんに「で、何が言いたいの」と言い、ソファーに置いてあったクッションを抱いた。 「真守に会いてえか?」 「兄貴がいないと会えないよ。きっと真守に会ったら俺は俺でいられないから」 「···まあ、あいつがいなくなることでそういう風になるのはわからんでもない」 「それなのに、真守から一瞬でも手を離したんだもんね。あんたって馬鹿なの?」 「うるせえな」 この人と話しているのはなんとなく楽しい。 クッションをポン、と投げるとキャッチして「何だよ」って言ってくる。 「なんか、ヤクザの若頭とか言うからもっと怖い人と思ってたよ」 「俺は俺だからな」 「うん、···はぁ。なんか馬鹿らしくなってきた。」 この人を知らないで嫌っていた自分が。すごく小さなちっぽけな人間に思える。 「俺さ、お前と仲良くしたいと思ってんだよ」 「···は?あんたって本当馬鹿だね!普通自分の恋人と寝たやつと仲良くしたいとか思わないでしょ!」 「それを言うな!腹立つだろ!」 「バーカ!」 「バカはテメェだ!」 言い合いになって燈人さんも子供みたいにワーワーと言いだす。 「···まあいい、俺は大人だ。お前を許してやる」 「何急に大人ぶってんの。大体大人は自分のこと大人だ。とか言わないんだよ」 「······。よし、おい架月、俺のことは燈人でいい、何か困ったことがあったら連絡しろ。ここにはいつでも来ていい」 渡された名刺を一応、受け取る。 「···利用するかもよ」 「もともとそういう世界で生きてるんだ、今更怖くねえよ」 何を言ってもダメなんだろう。ならもういいや。 もう帰ろうって立ち上がって部屋を出る。 「帰るのか?」 「帰る。···じゃあね、燈人」 「···ああ、またな」 軽く手を振って、部屋から出た。

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