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第64話

「ぅ、ぁ···?」 「起きたのか?」 目を開けたら湯船に浸かって兄貴の胸に凭れかかっていた。 「あ···ごめん、最後までできなかった、でしょ」 「まあ」 「···ごめんね」 身体がだるい。 頭もなんだかふわふわしてて兄貴に凭れたまま動けない。 「頭、ふわふわする」 「逆上せたか?」 「んー···ねえ酒のみたい」 「はいはい」 抱き上げられてお風呂から上がる。 タオルで身体を拭いて下着と兄貴の少しでかいスウェットを着てリビングに行く。 「なんか、ケツに違和感あるんだけど」 「まあそうだろ」 「力入れたら普通にイったりして」 あんなに前立腺弄られたらそうなるのかな。 目の前に酒を出してくれた兄貴、それをとってゴクゴク飲むと兄貴が溜息をつく。 「何?兄貴が気持ちよくなれなかったからヤりたいの?」 「···いや」 「ヤりたいならいいよ」 「じゃあ後でやる」 ああ、ヤりたかったのは本当なんだ。 ケラケラ笑って「オッケーオッケー」と兄貴の首に腕を回す。 「それならそうってさっさと言えば良かったのにさぁ」 「···無理させたかなって」 「今更だよ」 キスをして、ああ、なんか、本当に恋人同士みたい。 これで、俺が女で、街で手なんか繋いでさ、そんな妄想を広げる。 「何考えてんだよ」 「···あり得ないこと」 だからこんなにも心が虚しくなる。

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