65 / 203
第65話 太陽side
「朧ー」
「ん?」
今の仕事を辞めるのには最低2週間いるらしい。
さらに朧は指名数1位だったからと仕事を辞めるまでほとんど毎日のように仕事に行ってしまう。出勤の最終日には壮大なパーティーをしてくれるとか。
けれど仕事のたびに疲れた顔をして帰ってくる朧を見て大丈夫なのかなって不安になる。
「今の忙しいのが終わったら、一緒にどこか遠くに行かね?」
「いいな、それ」
「どこでもいいよ、朧の好きなところに一緒に行こう」
「···どこでもか」
虚ろに遠くを見た朧、消えてしまうんじゃないかって抱きしめる。
「どうした?」
「···何があったの、とか聞かないから···急に消えたりしないでくれよ」
「当たり前だろ、俺が消えると思ったのかよ!」
ケラケラ笑って俺の髪を撫でる。キスをされて、それでも不安は拭えなくて朧の顔を両手で挟んで何度もキスを繰り返した。
「太陽」
「ん···」
落ち着いて地面に二人して寝転ぶ。抱きしめてくる朧の体温は温かい。
「別に、何もねえんだ」
「え···?」
「何があったわけでもない。なのに、辛い」
「それは···一番、嫌だな」
「だろ、原因もわからないのにどうしろってな」
自虐気味に笑う朧を見るのは悲しい。
目を閉じて抱きつくと背中をポンポンと撫でられる。
「別に病んでるわけじゃねえし、何ともないよ」
「···そんな顔すんな」
「変な顔してたか?」
胸が苦しくなってきて顔を上げ朧の目を見た。
「無理しないで、本当に」
「···わかってるよ」
「俺ももっと、ちゃんとする」
「あ?よくわかんねえけど、わかった」
わかんねえくせにわかったとか言うなよ。
フって口角が上がる。ただ朧がどこかに行ってしまわないだけかって事だけが不安で頭の中がグルグルとしていた。
ともだちにシェアしよう!