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第66話

朧が最後の出勤の日。 帰ってくるのは明日の朝か、もうちょっと遅くなるかも。って言葉を残して出て行った。 何とも表現しがたい顔で。 少しだけ痩せた気もする、飯はちゃんと食ってる···よな? 朝と昼は一緒に食べるからわかるけど、夜は?ちゃんと店で食べれてるのか?目に見えないことろは不安でしかない。 「何か···元気になること···」 考えるけど思いつかないし、そういう時って何もしないでゆっくりしていた方がいいのかもしれない。 どうしていたらいいのかわからなくてそういう事を知ってそうな兄貴に連絡をしてみることにした。 「───はい」 「相談がある」 「突然だな。いいけど、どうした?」 兄貴に朧の事を話すと「ふーん」とどうでもいいと言われてるような返事が返ってきた。そりゃあ兄貴にとってはどうでもいいかもしれねえけどさ!! 「そいつがやること、全部受け止めてやれば」 「兄貴ならそうすんの」 「俺ならな。嫌だって言うことはやらせなくていいし、自分の好きなようにさせてたらいいと思う。それで自傷行為とかに走ったら···まあその時はそれも受け止めてやるしかねえんじゃねえかな」 「···架月も、そうなのか···?」 自分に言い聞かせてるようにも聞こえたからもしかしたら架月がそうなのかもしれない。もしそうであって、兄貴がそれを受け止めてあげていたんだとしたら、それはすごく凄いことだと思った。普通なら驚いて非難してしまったりするだろうに。 「あいつの場合そういうのは全部セックスに走るからなぁ···」 「···え、兄貴、もしかして···」 「······。話は終わりか?」 「終わってねえよ、兄貴と架月って···」 「じゃあな」 一方的に電話を切られて唖然とする。 え、もしかして兄貴と架月は今、そういう関係···? いやいや、そんなことより!! 俺は朧のことを全部受け止めることだけを考えよう。 でももし···俺のことが嫌になって、違う誰かをここに連れてきたら?───その時も、朧の気持ちを受け止めて引かなきゃなんねえのかな。 そんな事がないようにって心の中で何度も祈った。

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