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第68話
朧が上がってくるまでに俺は普通でいないと。深呼吸を繰り返して両頬をパシッと両手で強めに叩いた。
「よし」
俺はなんともない、朧を受け止めるだけ。
ご飯は一応温めておこう、もし朧が食べなかったなら明日にでも回せる。
ちょうどご飯が温め終わったところで朧が風呂から出てきた。そのままキッチンに立ってる俺を後ろから抱きしめてくる。
「手、冷やす?」
「ん」
まだ濡れた髪、ポタポタと雫が頬に落ちてきた。
袋に氷と水を入れたのをタオルで包んで朧の腫れた手に乗せる。ヒンヤリとして気持ちよかったのか少しだけ硬くなってた表情が柔らかくなった気がした。
「···さっきは悪かった」
「いいよ。誰だって言いたくないことも放っておいて欲しい時もある」
「それでも、悪い」
隣に座る俺に縋るような目を向けてくる。大丈夫って朧の頬に手を置いて撫でると目を細めて笑いキスをしてきた。
「ご飯、どうする?」
「食べる」
「ん、今日からは、ゆっくり過ごそう」
もう1度、朧とキスをしてご飯を用意するためにそこから離れた。
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