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第72話

「───で、帰ってきたのか」 「うん。···間違ってたかなぁ」 兄貴の足の間に座り凭れる。沈んだ気持ちで帰ってきてすぐ、兄貴に「何があった?」って聞かれて、やっぱり秘密事はできないんだなぁと思った。 太陽のことを話せば「お前が正しいと思ってやったことなら間違ってねえだろ」って。客観的な意見が欲しいのに。 「で、お前若のところ行くのか」 「あ、連絡あったんだ。来いって言われたよ」 「いけるのかよ。赤石もいるんだぞ」 「だから俺は兄ちゃんに任せるって言ったんだ、そしたら燈人がいけるって言うように命令するとか何とか言ってさ···」 腹に回ってる兄貴の手を掴む。 そのまま何をするわけでもなくそうしていると「なあ」と兄貴が俺の腹に回してる腕の力を強くしてまるでもっとって言うように引き寄せた。 「お前は···本当に赤石じゃなくて、俺でいいのか」 「···えっと、何言ってんの?」 「赤石の代わりだよ、もう納得いってんのか」 何を思ってそんなこと聞いてるの? 考えて考えて出てきた答えは、兄貴は俺に愛されてるのかってこと、聞きたいのかな。って思った。 「俺、真守じゃなくて兄ちゃんのことが好きだよ。それは代わりとか、そう言うのじゃなくて純粋に兄ちゃんが好き」 「···なら、もう大丈夫だろ。」 「え?」 「俺が好きなら、赤石と若の一緒にいるところを見てももう大丈夫だろ」 「···そういうものかな?」 「ああ、そういうもんだ」 軽く振り返ってキスをする。兄貴がそういうならもう心配ないね。 温かい兄貴の手が俺の両方に添えられる。気持ちが満たされていく、ああ、そのまま幸せな時間を過ごしたい。 「······もうそろそろ、行かなきゃだめか」 「···そうだね」 もっとイチャイチャしてたいのに。 兄貴が車を出してくれるらしく「若の家に行くなら何か手土産を···」と酒屋で高めの酒を買ってから燈人の家に向かった。

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