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第73話

燈人の家について兄貴の車から降りる。ちゃんとしろよ!って言われたけどちゃんとって何だ?いつも通りでいよう。 「いってきまーす」 「帰る時連絡してこい。迎えに来る」 「うん。ありがとう」 車が見えなくなるまで見送ってマンションのオートロックで兄貴に言われた燈人の部屋番号を押した。ピンポーンて音がなってカメラに向かって手を振る。 「あがってこい」 「んー」 ドアが開いてエレベーターに乗り部屋のある階まで行く。広いなぁこのマンション。さすがだなぁ。と思いながらある部屋の前で足を止めてインターホンを押した。 はーい、っていう聞き覚えのある声が聞こえてきて懐かしく思う。懐かしいっていう感情だけしか今は感じない。兄貴の言った通りだ。 「久し振りだね、架月」 「前に会ったけどね。···お邪魔します」 今は前みたいに憎いって感情は出てこない。持ってきた酒を渡すと嬉しそうに笑って「入って入って!」と俺の背中を押す。 「燈人!架月来たよ!」 「んー···」 「ちょっと、ねえ!···おい!」 「何だようるせえ」 テレビに釘付けになってる燈人を叩いた真守。 燈人は俺を見てこっち座れと椅子を指差す。 「ご飯ももうちょっとでできるから待っててね」 「···ありがと」 真守がそこから消えて、俺は燈人と2人きりになる。 煙草を取り出した燈人が俺の方に向かって「吸うか?」とか聞いてきたけど、だから、一応俺、未成年なんだってば。 「その様子ならもう大丈夫みたいだな」 「···兄貴のおかげだよ」 「ふーん。羽島に何か言われてんのか?」 「ううん、兄貴がいるから、俺は大丈夫。···あとは太陽だけだよ」 「太陽···?···ああ、お前の双子の」 「そう」 太陽のことを話すと燈人はふぅ、と息を吐く。 まあ恋人のことを抱いたやつの話なんて聞きたくないか。それに関しては俺も同じだけど。 「太陽は吹っ切れてねえんだな」 「まあ、本当に真守に隣にいて欲しいって思ってたのは俺じゃなくて太陽だと思うからね」 「難しいな···」 「太陽こそ、真守に会ったら爆発しちゃうんじゃないかな」 そう話してるとコトン、と目の前に酒が置かれる。 バッと顔を上げると複雑そうな顔をした真守が俺を見下ろしてた。 「···ごめんね」 「謝らなくていいよ」 「でも、太陽が···」 「太陽も新しい人、見つけたみたいなんだ」 「太陽も…?じゃあ架月も新しい人、いるんだ?」 ···あ、口が滑った。 黙秘します。と出してくれた酒に口をつける。 誰!誰!としつこく聞いてくる真守にだんだんと顔が熱くなってきた。 「ねえ!誰!」 「······に、き···」 「え?」 「だから···兄貴と···」 「えええ!?」 驚いたのは真守だけじゃなくて燈人も。 目を見開いて俺を凝視する。その視線から逃げようと顔を逸らしたら「いやいやいや、ちょっと待て」と燈人に肩を掴まれた。 「お前、ほ、本当に羽島···いや、海と···?」 「······う、ん」 「ねえねえ聞きたい!その話聞きたい!」 燈人と真守に挟まれて、とりあえず頷く。 「先に飯な」と燈人が言うから真守が急いで用意をして目の前に並んだ豪華な食事に手を合わせた。

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