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第80話
いけない、いつの間にか俺も寝てしまってた。
兄貴が言ってた1時間がちょうど経ったところでトントン、と兄貴の肩を叩く。
「起きて」
「···ん、」
のそっと起き上がった兄貴は目を閉じたまま座って深く息を吐いた。そしてそのまま動かなくなる。···え、これって寝てる?
「兄ちゃん?」
「···ん?」
「寝てるでしょ」
「···ん」
さっきから「ん」しか言ってないよ。眠たいならもっと寝ればいいのに。そっとソファーから降りて兄貴を横に寝かせてあげる。寝室から毛布を持ってきて掛けてあげるとモゾモゾ動いてからスースー眠った。
ベッドのシーツ、取り替えないと。
やった後の片付け、やるの忘れてたや。
急いでシーツをとって洗濯機に入れ回した。
さて、何をしようかな。
兄貴が寝てるのを邪魔するわけもいかないから俺は1人でひっそりとテレビを見たり携帯をいじったりして時間を過ごした。
「···架月」
「なあに?」
起きたらしい兄貴が俺の方に手を伸ばしてこっちに来いと手招きをする。
「何?」
「悪い、トイレ、連れてって」
「どうしたの?」
「吐く···」
え、と思って固まると兄貴が手を口元に当てる。急いでトイレに連れて行くと嘔吐した。ましになったのか力が抜けてそこに座ったままになる兄貴。口をゆすがせてからベッドに連れて行く。額を触れば酷く熱い。
「病院行こう」
「いい。寝てたら治る。薬くれ」
「ダメ、ちゃんと病院行くの!」
と言っても、高熱の兄貴を病院まで歩かせるわけにもいかない。タクシーを使おうにも俺はそんな金を持ってない。うーん、と悩んでポカン!と頭に出てきたのは燈人だった。
布団をかぶって温めるとまたすぐに目を閉じて眠る兄貴を見ながら燈人に電話をかける。
「──何だ」
「助けて」
「何があった」
「兄貴が熱出して倒れちゃったんだ。病院に連れて行きたいんだけど免許ないから車出せないしタクシー使おうにもお金ないし···」
「羽島が熱?珍しいな。···わかった、すぐ行く」
「ありがとう」
荒い呼吸をして眠る兄貴、寒いのか布団を手繰り寄せてる。真っ赤になってる顔をみて不安になった。
***
「羽島くんは俺が運ぶからねー」
「ごめん」
燈人と一緒に真守も来てくれて兄貴を背中に負ぶってくれる。保険証とかを俺が持って戸締りして家を出ると車で燈人が待ってた。
「羽島寝てんのか?」
「うん。大分熱高いよ」
真守が後部座席に兄貴を下ろして、俺にも座るように言ってから助手席に座り燈人と話をしてる。
薄く目を開けた兄貴は俺を見てそれから燈人と真守をみてびっくりしたようだけどすぐにフラフラと俺の方に倒れこんできて、そのまま気を失ったかのように眠った。
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