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第81話

連れてこられた建物はすごく古いところ。 真守が車を降りて「トラー!」と中にいる人を呼んでる。 「ここ、何?」 「俺たちみたいなのを診てくれるところだよ。真守の信頼してる医者がいる」 「へぇ···?」 建物の中から出てきたのは長身のすごく顔の整った白衣を着てる男の人。真守が兄貴を車から降ろしてトラと呼ばれたその人の指定するベッドに兄貴を下ろした。 「ひっどい熱ねぇ、吐いたりした?」 トラさんの口調に驚いたけどコクコクと頷いて返事をする。そしたら「この子可愛いわね」と頬を触られて背中がゾワリとした。 「点滴しましょうねー」 医者だから当たり前なんだろうけど、手際よく作業するトラさんは兄貴に点滴をしてから俺の方をくるりと振り返って「ふふふ」と笑った。 「この子の弟さん?」 「あ、はい」 「お名前は?」 「架月です」 だんだん近づいてくるトラさんに俺もだんだん退いて、いつの間にか背中は壁にピタリとくっついて逃げ道がない。やばい、と思ったらトラさんがジーッと目を見てきてふんわり笑った。 「可愛い、可愛い!赤石!この子もらってもいい!?」 「だめだよ馬鹿。その子は羽島くんの弟だけど恋人でもあるんだから」 「あら!今はお兄さん倒れてるからいいんじゃないの?」 「本当馬鹿だね。だめだって言ってるでしょ。俺だけじゃなくて燈人も怒るよ」 「何で怒るのよ」 「架月は燈人の友達でもあるからね」 トラさんの視線が俺から真守に移る。 「ふぅーん」と言葉を落とし、俺から離れてくれたと思ったらすごい力で抱きしめられて驚いた。 「い、たい···っ」 「トラ、いい加減にしなよ」 「だって可愛いんだもん」 「へぇ···。じゃあ最近トラが気になってる子にトラは実はこういう人でしたーって言ってきてあげるよ」 「ぶっ殺す」 トラさんが俺を離して真守に詰め寄る。胸倉を掴んで「俺の獲物取ってみろ。お前を一生かけて苦しめてやる」と恐ろしい言葉をドスのきいた声で言っていた。 それから1度深呼吸をして俺を振り返る。その時にはもう笑顔だった。 「さてと、あなたのお兄さんは今日はこのままここで様子を見るわ。あなたはどうする?」 「俺は···兄貴の、側にいる」 「そう、じゃあ隣のベッド使っていいからね。」 俺の手をとって兄貴の隣に座らせる。 点滴のおかげか呼吸が落ち着いていて安心した。

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