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第83話
さっきトラさんが手伝って欲しいって言ってたのは資料をまとめることだったらしい。
言われた通りに作業をしてると「トラー」と低い男の人の声と「トラさん!」と小さい子供の声が聞こえてきた。
思わずそっちに顔を向けるとこれはまた凄くかっこいいお兄さんと小さな子供がいる。
「あらぁ、命にユキくんに、どうしたの?」
「あのね、あの、僕、クッキー作ったの···!」
「もしかして、くれるの?」
「うん!いつも、ありがとう、トラさん!」
ユキくんって呼ばれた小さい子がトラさんにラッピングされたクッキーを渡してる。トラさんは口元に手を当てて喜んでユキくんを抱きしめてた。
「···お兄さん、だあれ···?」
「えっ」
ユキくんと目があってそう聞かれて「えっと···」とトラさんを見る。
「架月くんよ」
「かづき、くん···僕、ユキ···です···」
恐る恐るという感じに俺に近づいてきたユキくん。手を差し出してきてその手を掴むと嬉しそうに笑って「よろしくね···!」と言ってきたから俺も同じ言葉を返した。
「お前どっかで見たことある」
「······気のせいじゃないですか」
「いや···あ、わかった。お前、最近まで街で暴れてた双子の片方だろ。俺らのところまで情報流れてきてたぞ。喧嘩も程々にしろよ」
「はぁ」
俺らのところまで、ってことはこの人もヤクザか何かか?この間燈人には捕まったし、確か俺が目をつけられてたのは桜樹組と···あ、そうだ、浅羽組。
「···浅羽組···の人?」
「···何で知ってんだお前」
凄んできたその人に肩を上げてトラさんの後ろに隠れる。
ていうか何でその筋の人とユキくんみたいな小さい子供が一緒にいるのかが謎だ。
「この子、赤石と赤石の恋人の友達よ。」
「赤石の···?」
きょとん、とした顔になったその人。俺を見てそれから何かを考えてるのか無言になる。
「···俺の、兄貴が桜樹組で···」
「あ?お前の兄貴?誰」
「羽島···」
「ああ!知ってる」
コクコク頷いて「悪い悪い」と優しく笑った。
「俺は黒沼命、よろしくな」
「架月です···よろしくお願いします」
なんか今日はいろんな人に会うなぁ。
もともと人見知りな俺はそんな今日に少し疲れていた。
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