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第85話
「兄ちゃん!」
「あ···?電話したのに、わざわざ来たのか」
「どうしたの?」
「喉、渇いた」
どうやら喉が渇いて何か飲みたいのに体が怠くて動けなかったみたい。とりあえず水···とトラさんのところにいってそれを伝えると「これ飲ませてあげて」とスポーツドリンクを渡された。
「兄ちゃん、飲める?」
「ん」
体を起こすのを手伝ってそれを渡すと結構な量を一気に飲んで「はぁ」と息を吐く。
「悪いな」
「ううん、あ、そう言えば今浅羽組の黒沼命さんって人、子供連れて来てるよ」
「あ、黒沼···?挨拶、したほうがいいか···」
「動けるの···?」
フラリと地面に立った兄貴、支えて命さんたちがいるところに行くとトラさんに驚かれた。
「黒沼さん、お久しぶりです。」
「あ、お久しぶりです。大丈夫なんですか」
「大丈夫です」
軽く会釈するけどそれでさえもふらっとしていて危ない。
「寝てないと体、辛いでしょう?」
「あ、あんたが診てくれたのか?」
「ええ、あたしはトラよ!よろしくね」
「ああ、ありがとう。」
トラさんが兄貴の額に触れる。「うーん」と言ってから「やっぱり寝てなさい!」と背中をとんと叩いた。
「羽島さん、俺の事とか気にしなくていいんで、ゆっくり休んでください」
「···すみません」
兄貴が申し訳なく笑って「じゃあ」と部屋から出る。俺も兄貴を支えて一緒に部屋を出て兄貴をベッドに戻した。
「なんか、格好悪りぃなぁ」
「そんなのどうでもいいよ、今は体が疲れてるんだから休まなきゃ」
「···架月」
「何?」
「···キス、してぇ」
兄貴からそんなこと言うの、初めてだ。
驚きながらも嬉しくて寝転んでる兄貴にキスを落とした。
「好きだ」
「うん。俺も、大好きだよ」
「すぐ治すから」
「うん」
「そしたら、俺、ちゃんと太陽のこと···」
兄貴が言葉を言い終わるまでにまたキスをする。
何も考えなくていい、体が疲れてる時にいろんなことを考えるのはしんどいと思うから。
「頑張りすぎだよ」
「··················」
「何も考えなくていいから。大丈夫」
笑いかけるとフッと笑って安心したように目を閉じる。
手を取ると強く握られた。
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