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第86話

「大丈夫なの?」 「ああ、もう何ともない」 次の日、俺が起きるよりも先に起きてトラさんと話をしてた兄貴はもう元気そうだ。兄貴の座ってだ隣に腰を下ろしてふんふんと足をのばす。 「仲良いのねぇ。さすが、兄弟兼恋人?」 「···言ったのか、架月」 「違う違う。真守が言ったんだ」 ジト目を向けられたから慌てて誤解を解くと「悪い」と頭を撫でられて目を閉じる。兄貴に擦り寄ってその感覚に笑ってると目の前で俺とは違う笑顔でトラさんが俺たちのことを見てた。 「いいわねえ、あたしもそれくらい誰かに甘えたいし甘えられたい!」 「トラさんはすぐに他の可愛い子たちに目いくからきっと無理だね」 「架月くん、そんなこと言ってたら襲っちゃうわよ」 「だって本当のことでしょ?」 ふん、と笑って兄貴の肩に額を当ててグリグリとする。というかそろそろ帰ろうよ、兄貴にそう言うと腰を上げて「そうだな」と俺の頭にポンと手を置いた。 「金は?」 「ううん、いいのよ!あなた桜樹組でしょ?あそこからはまとめてお金もらってるからね」 「そうなのか···」 あまりその話を知らなかったみたいだ。 へぇ、と頷いて俺を振り返り「帰るか」と一言言って俺の手を取る。 「じゃあね、トラさん。ありがとう」 「またいらっしゃい」 トラさんに手を振って建物を出る。 ここから家まで歩いてどれくらいなんだろう。 どうやらそんなに遠くないようで兄貴と手を繋いで道を歩いた。

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