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第89話

日向と別れてあまり歩いたことのない道を歩く。 誰もいない静かな道、のそりのそり歩いてるといつの間にか太陽が真上に来てる。 「···腹減った」 携帯で時間を確認したらちょうど昼だし、朧からもついさっき昼飯は家で食うか?とメッセージが来ていた。それにうん、と返信してちょっと急ごうと足を進める。 「あ」 「太陽?」 この道を歩かなきゃよかった。と後悔した。 目の前にいたのは兄貴と架月、仲良く手を繋いでる。 「太陽!」 「···あ、悪い、ちょっと急いでるから」 「おい、太陽待て」 架月が近づいてきたからこの場から早く離れたくて隣を通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。壊れたロボットみたいに首を動かして振り返ると兄貴がちょっとだけ疲れたような顔でこっちを見ていた。 「泣いたのか?」 「······、だとしても関係ないから。」 「まあ、そうだな。飯は?」 「朧と食べる。ごめん、本当急いでる」 手を振り払って、足早にその場を離れる。 後ろから架月に名前を呼ばれるけどそれを無視して。何でかわからないけど今、架月にだけは会いたくなかった。いや、わからないなんてことは嘘だ。 ───例え双子だとしても弟である架月にこんな格好悪い姿を見せなくなかったから。 「···今の方が、格好悪いか」 逃げる俺を架月はどう見てるんだろう。 そんな不安と戦いながら、家について「おかえり」と言う朧に抱きついた。 「落ち着いたか?」 「ん、」 朧の膝の上に向かい合わせに座って肩に顔を埋める。 抱きしめられてボーッとしてると「なあ」と声をかけられた。 「どこ行ってたんだ?誰に会ってた?」 「···架月の元恋人の···日向のところに行って、あとはさっき帰り道で兄貴と架月に会った」 「ふぅん···何か言われたのか?」 「···日向にはアドバイスしてもらって···兄貴達には何も言われてない」 朧の背中に回してる腕に強く力を入れると、朧の俺の背中に回る腕にも力が入れられる。 「俺もっと、頑張る」 「ああ、応援してる」 顔を上げて朧に触れるだけのキスをした。

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