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第90話
「朧、前言ってたやつ、覚えてる?」
「あ?何だっけ?」
「遠いところ行こうって。」
朧と昼飯を食べてる時に不意に思い出したあの日の出来事。
「今から行くのか?」
「行きたいなぁって思った」
「じゃあ行くか。」
あっさりと受け入れてくれた朧に驚きながら嬉しさが溢れてきてささっとご飯を食べ終わりすぐに準備をした。
「すげえ楽しみ!!」
「携帯忘れてんぞ」
「あ、ごめん、ありがとう」
楽しみすぎて忘れてしまってた携帯をポケットに突っ込む。さて!行こう!と靴を履いて朧に手を引かれながら外に出た。
***
「わー、何年かぶりに来た」
電車に長い間揺られてやっとたどり着いた場所。
目の前に広がる夕焼けのせいで赤くなってる海はすごく綺麗で隣に立ってる朧もボーッとしてる。
「なあなあ、下まで行かね?」
「いいけど、泳ぐとか言うなよ。着替えねえし風邪ひくから」
「わかってるよ」
少し高い場所から浜まで降りて直接海に触れると思ってた以上に冷たくて慌てて手を引っ込めた。
「冷たい!」
「そりゃ、冬だし···」
「やべえ!朧!こっち!」
久しぶりにバカみたいに楽しくて、わー!と走ってたら朧に手を取られてがくん、と後ろに引かれる。
「どうした?」
「お前がそのままどっかに行きそうだなって思って。」
「何言ってんだよ、それはどっちかっていうと朧だろ」
「じゃあ···どっちとも勝手にどこかに行かないように手握ってろ」
「うん」
同じ速さで浜を歩く。
少ししてでかい岩を見つけてそこに腰を下ろした。
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