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第94話

それから数日経ったある日。 兄貴の方に太陽から「架月に日向に会うように伝えて」とメッセージが来ていた。何で?と思いながらその言葉に頷いたのは酷い別れ方をしたんだという自覚があるから。 「赤石にちゃんと会えたんだから、別にそいつを殴りつけたりすることもねえだろ」 「···前からそんなことしてないよ」 「傷つけたことはあるんだろ?」 「そうだね···謝らないと」 ググって伸びをして立ち上がる。 「じゃあ行ってくるよ」ってコートを着て靴を履いた。 「まあ、何もねえとは思うが···何があったら連絡しろよ」 「うん」 「気をつけてな」 玄関のドアを開けて外に出る。 ちょっと気合を入れて日向の家に向かった。 何度も来たことがある日向の家、その玄関の前で深呼吸を繰り返していた。 今更あって何を話せばいい?謝るのは前提に後は何を··· 「──架月?」 「っ!?」 「わ、架月だ!久しぶり!」 後ろから声が聞こえて振り返るとニコって明るい笑顔を向ける日向がいた。俺といた時より明るくなった?元気になった?買い物袋を両手に提げてて重そうだ。1つ持つと「ありがとう!」と行って玄関の鍵を開けて俺を中に入るように促した。 「あの、日向···」 「座ってて、飲み物入れるから」 「日向っ!」 「び、っくりした···何?」 全然怒ってなんかないよっていう顔。 フワフワした笑顔が余計罪悪感を膨らませる。 「ごめん。本当に、酷いことした」 「···いいんだよ。あの時、架月も不安定だったって太陽くんから聞いてるし、僕もおかしかったから」 「···日向は、きっと、俺のこと許しちゃダメだよ」 「なんで?」 「俺と一緒にいた時間は日向の人生の中で多分、1番無駄な時間だったと思うからね」 そう言って俯くとクスクス笑いながらすぐ隣まで来て「あのね」とまるで小さい子供に言い聞かせるかのように話し出した。

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