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第95話
「架月と過ごした時間が無駄っていうなら、それは僕自身を否定することになっちゃうから、そんなこと思わない」
「何で···」
「だって、本当に架月が好きだったんだ」
思わず顔を上げて日向を見ると悲しげに笑ってる。思わず手を伸ばして頬に触れると温かくて気持ちいい。
「ごめんね、俺、こんなんで」
「ううん、僕もごめんね」
「傷つけて、ごめん」
「···それでも、好きだったよ」
「俺も、好きだったよ」
好きだった、確かにその時間はあった。
目にたっぷりと涙を滲ませる日向を1度抱きしめて額を合わせて笑った。
「もう帰るの?」
「うん、だって気になる人いるってさっき言ってたし、話聞いてるようだと相手の人も日向のこと気になってるみたいだし」
少しだけ話した、日向の今気になってる人のこと。
相手はすごく包容力のある人で俺と比べるとすごく大人だ。きっと日向にはそういう人が合う。
「その人のこと、絶対捕まえなよ!」
「······待って待って、捕まえるって何!?」
「応援してるから!」
日向にじゃあねって手を振って家を出る。
すごく心が楽になった。
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