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第104話 太陽side

兄貴を呼び出したのにはちゃんとした訳があった。 遡る事1時間前。 朧がちょっと出てくるって立ち上がった。時間も時間だったからどこに行くのかって聞いたけど、その言葉は無かったかのように無視されて出て行ってしまった。 突然、とてつもない不安に襲われて、30分、1時間、経っても帰ってこない。1人でいる事が怖くなって携帯を手に取った。 最初は朧に連絡をしたけど、応答はない。 用事が忙しいのかもしれないって思えばいいんだけど、なぜか今の俺にはそれが出来なくて兄貴に電話をしてとりあえず1人でいる事はやめようと俺も家を飛び出して兄貴に会いに行く事にした。 「太陽」 「あ、にき」 先に着いていた兄貴が俺を見て安心したように笑う。 駆け寄って抱きつくと頭を撫でられて泣きそうになった。 「どうした?何かあったのか?」 「···1人が嫌だったんだ」 「1人?朧ってやつはどうした」 「どっか出かけてる」 そうか、と小さく言葉を落とした兄貴は俺の背中を軽く叩いて「俺の家こい。ここじゃ寒いしな」と少し赤くなった鼻や頬を手を当てて温めていた。 「···兄貴の家、行きたくない」 「赤石のことか?」 「うん···嫌だ」 「大丈夫だ。赤石な、お前にも会いたがってるぞ。お前も本当に好きな奴に背中押して貰えばきっと···赤石の事なんてただの思い出になる」 優しく笑って「はいはい、行くぞ」と俺の手を取り引っ張る。決して無理矢理じゃないのにそれについて行ってしまうのは兄貴がいたらきっと大丈夫だっていう思いがあったから。 「あ、架月は寝てるから悪いけど静かにしてやってくれ」 「うん」 何度か歩いた事のある兄貴の家へ続く道。 繋がれてる手は温かい。 安心してた。だから気付かなかった。 「────太陽?」 すぐ傍に朧が居たなんて。

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