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第111話
「一応今まで貯めた金があるから、専門学校行こうかなって思ってる」
風呂から上がって少しするとこれからのことを朧が真剣に話し出した。
「何、すんの?」
「···笑うなよ」
「笑わないよ」
「前も、ちょっと話したと思うけど···建築のこと、学びたい」
イキイキとした顔でそう言った朧、なんか意外だけど、一度きりの人生だ、やりたい事をやらないと勿体無い。
「いいじゃん、応援するよ」
「···でも、お前を1人にする時間が増えちまうぞ?」
「そうだけどさ、朧がしたいことなんだろ。それを止めてまで一緒にいろなんて言わないし」
そこまで聞き分けないやつじゃないよ。
朧に抱きしめられて、キスをする。
ひどく甘いそのキスが終わるとどうにも寂しくなってしまってもっと、って朧の首に腕を回して強請ってしまう。···なんか、俺、架月に似てきた?
「好きだから、応援してるから、頑張って」
「ああ」
何度目かのキスをした後、「そういえば···」と朧が俺の腰に腕を回す。
「お前、そろそろ1回家に帰れ」
「は、やだよ」
その腕を無理矢理解かせてヤダヤダと首を振った。
「親も心配してるはずだ、高校だって行かねえと、後で絶対後悔するぞ」
「···でも、そしたら朧ともっと会えなくなる」
うーん、と朧は唸った後、何かを思いついたのかニコニコ笑って「じゃあ!!」とでかい声を出す。
「お前が高校卒業したら、本当に、一緒に暮らそう」
「···何それ、絶対卒業する」
一気にやる気が湧いてきて、じゃあ近いうちに家に1度帰ろう、と朧と約束を交わして、架月も一緒に1回帰らねえかなって後で連絡してみることにした。
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